名ばかりの妃程、人生を無駄に過ごしている事はない。

私は読んでいる本を閉じた。

「もう読まれないのですか?」

たった一人の使用人が、私に話しかけた。

「ええ。もう飽きてしまって。」

「もう飽きてしまわれたのですか?せっかく後宮の本をお借りできたのに。」

「だから、よ。」


使用人が借りて来た本は、皇帝の寵愛を受けて幸せに暮らすお話。

今、この本が後宮で流行っていて、どの妃も読みたくてたまらないそうだ。


「もう返して来てちょうだい。」

「はい。」

使用人は、私の前から本を取り、部屋を出た。

静かな部屋の中に、鳥の鳴き声が聞こえてくる。

平和な午後。

でも、平和過ぎて退屈で仕方がない。


「ここに来て10年。皇帝が会いに来て下さったのは、いつが最後だろう。」