何とか城から逃げ出すことができた私は逃げる為とはいえ、王子の足を踏みつけるというとんでもないことをしてしまったことを改めて実感し血の気が引く。
「とんでもないことをしてしまったわ……」
ティティアーナは重たいため息をついて呟きながら、家に帰る帰路を歩いていた。
ガラスの靴を脱ぎ捨ててきてしまった為、歩く度に地面の感触が直で伝わり、とても痛い。
「王子の目の前でガラスの靴脱ぎ捨てたのだから、気付いたら絶対拾うわよね。はぁ…… これじゃ見つかってしまうのも時間の問題かもしれないわね」
私は頭をフル回転させて考える。起こり得るかもしれない未来を変える為にはどうすれば良いのかを。
「家を出て国外逃亡でもしようかしら」
まあ、国外へ辿り着くまでに捕まったら意味がないのだけれど。それに継母であるヴィアラと姉二人のリゼとロナも私が居なくなることは願ったり叶ったりだろう。
「よし、決めたわ! 帰ったらすぐ家を出る準備をして国外へ逃亡するわよ」
ティティアーナの芯のある声が夜の闇に溶け込むように消えていく。
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12時を過ぎる前に家へと帰って来てしまった私は妖精の魔法で仕立てられた星柄のデザインが施された魔法でまだ解けていない青色のドレスを脱いで、いつも着ている地味でボロボロの見窄らしいワンピースに着替えて、家を出る身支度を整える。
「よし、これで大丈夫かしらね。一応、一言くらい残しておきましょうか」
舞踏会が終わったら帰ってくるであろう継母ヴィアラと姉二人のリゼとロナ宛に一言『お世話になりました。もう戻りません』と書いた置き手紙を残し、私は荷物を持って家を後にした。
「国外逃亡なんて、我ながら思い切った行動だわ。頑張って逃げるわよ……!!」
暗い夜空の下、ティティアーナは自分自身に気合を入れて歩き始める。
夜の空に浮かぶ満月がティティアーナの姿を見守るように照らしていた。