「はぁ~……あ、でもそういえば……」
ため息をついた後、ふと思い浮かんだ人物が二人いた。
それは明智光秀と柴田勝家だ。
光秀の方は単純に話しやすいというのもあるが、本能寺の変が起こらないようにする為にはまずこの光秀を仲間にしようという蘭なりの作戦だ。
見る限り真面目で誠実で優しくて、本当にこの人が本能寺の変を起こすのかと信じられないくらいだが、取り敢えずここで仲良くなって少しでも裏切りの芽を摘んでおきたい。蘭は今から一ヶ月前くらいから接触を図り、友達まではいかないまでも良く話すようになった。
そしてもう一人は柴田勝家。あの図体もでかければ声も大きい、しかしデリケートな交渉事をそつなくこなす意外な特技の持ち主である。そんな勝家は信頼に値すると蘭は勝手に思っているのだ。
二人にはタイムマシンの事や未来の事などはもちろん内緒で、色々と相談してもらうつもりでいた。
そこまで考えたところで障子が開き、信長が入ってきた。途端、空気が変わる。ピリッとしたオーラを撒き散らしながら、上座に座った。
その後ろから秀吉、光秀、可成が続いて入ってくる。
(あれ……?)
蘭が首を傾げた時、蝶子が声を上げた。
「あれ?今日は勝家さん、いないの?」
「本当ですね。お兄様、勝家はどうしたのでしょうか?」
「ふむ。勝家には末森に行ってもらった。」
「え?末森……?」
思わず声が出る。
(末森って確か、信長の弟の信勝って人がいる所だよな。どうしてそんなところに?)
「蘭丸。何か知っていそうな顔だな。」
「へっ!?あ、あの……何も知りません!」
「ほぅ……」
目を細めながら帯の隙間から扇子を取り出す信長。その顔が見れずに俯いた。
(裏山で会ったとか言えない!しかも会った事を内緒にしてくれなんて言われたのも絶対に………ってあぁ!!)
慌てて顔を上げるとニヤニヤしながら扇子を扇ぐ信長がいた。その奥では市も呆れが混じっている笑みを溢している。そして恐る恐る隣を見ると、全てのものを氷らせるような冷たい瞳の蝶子がいた。
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