一方蘭はというと……
「おーい!蘭丸!早く運ばんと、時間がないぞ!」
「は、はーい!」
祝言の準備に駆り出されていた。
「何て言ってあるのか知らないけど、俺の事すんなり受け入れられてるし……」
ぶつぶつ言いながらお膳を運ぶ。途中で戻ってくる家来達とぶつかりそうになりながらも溢さないように慎重に歩いていると、前から秀吉が歩いてくるのが見えて立ち止まる。
「頑張っているようだな、蘭丸君。」
「どうも……」
最初の印象が怖かっただけに、未だにちょっと苦手意識がある。
しかしちょっと後ずさりつつも観察は怠らなかった。
(こいつが秀吉かぁ~。確かにちょっとサルっぽいかも。それに『瞬間移動』なんて特技持ってる時点で本物のサルより俊敏でしょ。へぇ~信長といい、秀吉といい、こんな秘密があったなんて……)
「おい、蘭丸君!蘭丸!」
「は、はい!」
「早く持っていけ。ただでさえ予定時刻より遅れているんだ。殿がイライラしながら待っておるぞ。」
「げぇっ……」
「『げぇっ』じゃない!急げ!」
「はいぃぃぃ~~!!」
秀吉の鋭い声と、蘭の情けない声が廊下に響き渡った……
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