「父さん、分割して作ってるって言ってたわよね?」
「言ってたな。それが?」
「実は市さんの体調が思わしくないの。」
「え!?」
「普段は元気なんだけど、『共鳴』の力を使った後は三日くらいは寝込んでしまうの。ほら、一回の通信が長いし、この間はその場にいた全員に聞こえるように力を使う事になったでしょ?負担が大きかったみたいで。」
「そうだったんだ……」
「だからね、これからはなるべく負担はかけたくない。只でさえ面倒かけてるのに、体調まで壊しちゃったら申し訳ないもの。」
「確かにそうだけど……じゃあどうするんだ?」
「だから分割したものをそのまま飛ばしてもらうの。で、こっちで私が組み立てる。そもそも義元がどのくらいの大きさの物を取り寄せる事が出来るかもわからないし、分割した物だったらねねちゃんの『念写』の力も短時間で済むでしょ?そしたら市さんにあまり負担かからないと思うんだ。もちろん間隔を開けて十分に休養を取ってもらうけど。どう?」
 さっきの蘭の口調を真似て勝ち誇ったような顔をする。腰に両手を当てるというおまけつきだったが。

「大丈夫なのか?お前にタイムマシンの組み立てなんて出来るのかよ。」
「失礼ね。やってみないとわからないじゃない。それに私を誰だと思ってるの?ノーベル賞受賞者の娘よ?ずっと父さんと一緒に研究してきたんだもん。道具さえあれば何とかなるわよ。」
「どっからくるんだよ、その自信……」
 蘭はため息を吐いた。

(でも俺も同じか。今川の邸に行って生きて帰ってこれるという根拠のない自信がある。後がなくなった人間って何も恐くなくなるのかな。)

「よし、わかった。お互い頑張ろうな。」
「うん!」
「じゃあ俺、信長にこの事を伝えに行くから。細かい事は後で相談しよう。」
「わかった。」
 軽く頷き合うと、蘭は蝶子の部屋を出て行った。

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