見知らぬ少女なんて、放っておけばいい。

 自分とは何の関係もない子だし、それどころか、変なことに巻き込まれかねない。

 それなのに、自分はなぜ駆け足にも近い歩調で進んでいるのだろうか。

「――簡単だよ。人って、簡単に死ねるんだから」

 その言葉が耳に入り、晨は慌てて二人の間に割り込んだ。

「すみません。気にしないでください」

 自分の焦った声に隠れていた感情を突き付けられ、唇を噛む。

 不本意であるが、手は少女の手首を掴み、引っ張っていた。

 彼女の足が不安定によろめき、晨は力を緩める。

 それでも、晨はその場から連れ出すことしか考えられなかった。