「すごくなんて、ないでしょ」

「ううん。すごいよ。私は自分のことを話す勇気がないから。私ね、自分が心に傷を抱えてること、ちゃんと自覚してる。そのせいで、考え方がおかしいのもわかってるの。それでも、私は消えたいと思っているし、生きていてはいけないって思う」

 晨は肯定も否定もできず、奥歯をグッと噛んだ。

 そこに、色白の華奢な手が伸びてきて、晨の強張った頬をするっと撫でる。

 それに温もりが戻ってきていることに気付き、ほんの少しだけ安心した。

「だけど……だけどね。少しだけ、勇気を出してみたいと思う。晨なら、話を聞いても、私ことを捨てない気がするから」

「捨てないよ! 真白にはここにいてほしい。もし出て行くって言っても、そうはさせない」

「うん、そう言ってくれるって思った。じゃあ、聞いてくれる? 私の話はおもしろくないし、重たくて、耳を塞ぎたくなるかもしれないよ」

 晨は真白の両頬を手で覆い、額にそっとキスをした。