吹き抜けの開放的なロビーから外に出ると、強い風が晨の髪を舞い上げる。

「さむっ」

 思わず腕を組み、背中を丸める。

 普段は背の低さを気にして、背筋を伸ばしているが、寒さにだけはどうしても勝てない。

 新宿の人の多さにクラクラしながらも、迷路のような駅構内に入ろうとした時だった。

 不意に目に入ってきた光景に、うっかり意識を奪われてしまった。

 先日の少女が、先日と同じ服を着て、四十代くらいの男性に笑顔で話しかけている。

 二人の声は聞こえないが、笑顔の少女とは裏腹に、怪訝な表情を浮かべる男性の様子を見て、容易に会話を想像できた。

 気付けば、晨の足は少女と男性を目指し、勝手に動き始めていた。