呂色(ろいろ)の夜空を見上げる。

 朔の日の今日は月がなく、普段は隠れている弱い光の星たちも控えめな顔を出していた。

 穏やかな夜だ。

 晨と真白は買い忘れていたシャンプーの詰め替えを買いに、ドラッグストアを目指して歩いていた。

 手を繋いで、のんびりと。

 二人を包む優しく静謐な夜風を頬に感じ、晨はふと空に目を向けた。

 会話のない時間も心地いいと思うようになったのはいつ頃からだろう。

 楽しく話をしている時、揶揄ってくる真白を(たしな)めている時、不器用に野菜を切る様子を笑われている時、不意に目が合った時、この時間が愛おしいと思うようになった。

 かけがえのない時間を共に過ごしている。

 出逢いは奇妙だったけれど、あれは偶然ではなく必然だったのではと思うほど、二人でいることが当たり前になった。

 ――愛おしいな。

 晨が心の中で呟いた時だった。

「あれ?」

 真白の声が聞こえ、隣に視線を遣る。

 真白の視線は晨を通り越して空に向けられていた。

 その視線をたどると、闇夜に似つかわしくない赤が、空を侵食していた。

「なんだろう」

 晨の言葉に重なるように、何かが爆発する音が周囲に響いた。