細くて、今にも折れてしまいそうな指は庇護欲を掻き立てられる。

 この子を守るには、自分が強くならなければ。

 晨は自分の奥底に隠れていた弱くて脆い心の芯を手探りで掴み、ピンと引っ張る。

 これまで見ないようにしてきた頼りない男らしさを、今こそ手にしたい。

「今日は一緒にご飯を作ろうか」

「ええ? 急だね。うん、いいよ。晨、料理できるの?」

 真白は晨の脈絡ない提案に笑い、繋いでいる手をトントンと膝の上で弾ませる。

 楽しそうな様子が少し子どもっぽくて、真白の年齢を思い出した。

「全然できない。だから、教えてよ」

 本当は刃物が怖い。

 できれば見たくないし、触りたくない。

 目の前が紘一の血で真っ赤になっていく気がする。

 だけど、真白と一緒なら大丈夫な気がした。

 真白がいてくれるから、初めて自分と向き合えたと思うと、真白を支えたいと思っていたことが傲慢な気がしてくる。

 真白に支えられているのは、晨の方なのかもしれない。

「じゃあ、何にしようかな……簡単なものがいいよね。まずは、買い物に行って――」

 真白の声が明るく、楽しそうに転がり出す。

 ああ、これが幸せというものか。

 キッチンに二人で並んだところを想像すると、晨の唇がほんのり弧を描く。

 しかし、そんな温かなでささやかな幸せは、簡単に崩れ去るものだと思い知らされるのは、すぐのことだった。