「晨にとって、紘一さんは大切な人だったんだね」

 話し終えると、真白はそう呟いた。独り言だったのかもしれない。

「そう。自分よりも大切な人だった。だから、俺が死ねばよかったと思うし、俺が殺したんだと思ってる。本当は生きることから逃げたい。それでも、俺は紘一への贖罪を抱えて生きていくことが、何よりも罰だと思ってる」

 言わなくてもいいことまで話してしまっている気がする。

 それでも、もう真白に隠しておきたくなかった。

 真白が抱えているものはわからない。

 これまでの様子を考えると、晨の問題よりも重たい問題だと予想している。

 真白は決して弱い人間じゃない。

 大きな傷を抱えながら、必死に生きてきたはずだ。

『殺してほしい』と『自死』は似ているようで、違う。

 真白は生きていく理由を探している。

 許される時を待っている。

 『殺してほしい』のは『過去に囚われている自分』であって、『心の傷を癒してくれる』人を待っているのかもしれない。

 そんなすごい存在に自分がなれるとは思っていないけれど、ささやかな助けになれたら嬉しい。

 そう思っている時点で、真白が大切な人になっていると言える。

 これはもう気付けない振りなどできない、紛れもない事実だ。