「おはようございます! 四月六日、水曜日。今日は――」

 テレビから聞こえてきた女性アナウンサーの声に、視線を上げる。

 テレビには笑顔のアナウンサーが中継先と会話をしている様子が映し出されている。

 晨は部屋に広がるコーヒーの香りを肺いっぱいに取り込むように、大きく深呼吸をした。

 今日はイラスト集を出すための打ち合わせが入っている。

 身支度を終えた晨は、窓越しに空を眺めた。

 灰色の雲から今にも雨粒が落ちてきそうな、どんよりとした空模様だ。

 それが、人と会うことが嫌いな晨に追い打ちをかける。

 晨は鬱々とした表情でリュックサックを肩に引っ掛けた。

 イラスト集の打ち合わせは、新宿にある出版社で問題なく終わった。