「真白……ごめん。俺が、軽率だった」

 真白の傷には触れず、『殺してほしい』と言われたら、受け流せばいい。

 『生きていてはいけない』と言われたら、そんなことはないと諭せばいい。

 これまで通り、そうしていけばいいかもしれない。

 それも、一つの関わり方だ。

 晨が、傷には触れられたくないのと同じなのだろうから。

 二人とも過去から逃げて、生きることからも逃げて、この世に別れを告げる。

 それも、誰にも止めることのできない、一つの選択かもしれない。

 決して褒められる結末ではないということはわかっているけれど、そうしなくてはいけない理由を抱えているのも事実。

 だけど、本当にそれでいいのだろうか。

 真白の過去はわからないままだけど、晨がこれまで生きてきたのは、紘一への贖罪があったから。

 自分のせいで死なせてしまった唯一の親友。

 自分と関わらなければ、紘一が死ぬことはなかった。

 それでも、紘一は最期の瞬間も、晨の手を心配してくれた。

 イラストが描けるかどうか、自分の状態なんてお構いなしのように、気遣ってくれた。

 そんな親友の気持ちをなかったことにして、自分は逃げるように生きることをやめてしまう。

 どうしても、晨にはそれを選ぶことができない。

 それが、晨の生きる意味。

 そして、絵を描き続けている理由だ。