「真白――」

「どうして? そんなに、私のことがいらなかった? 邪魔だった? 私が生まれたせいで、二人は……私の存在が罪なんだ。生まれてこなければよかった」

「真白?」

「私なんて、産まなければよかったじゃない!」

 晨は慌てて真白の顔を覗き込んだ。

 焦点の定まらない目は虚ろで、顔色はいつも以上に白い。

 震える唇からは想像もできないような、強い怒りが全身から溢れ出している。

「真白? 真白ってば……俺のことわかる?」

「もう、嫌!」

 真白はそう叫ぶと、気を失ってしまった。

 幸い、晨の方へ倒れ込んできたお蔭で、身体や頭を床にぶつけずに済んだ。

 しかし、そんなことでは喜ぶことができない。

 それどころか、自分の身体がボロボロになるまで殴りたくなった。

 晨は、真白にパニックを起こさせたのだ。

 晨は真白をそっと寝かせ、自分の足に頭を載せてやった。

 小柄で細身の晨に、ベッドまで運ぶ力も、ソファーに寝かせてあげる力もない。

 もともと好きではない自分の非力さが、より一層嫌いになった。

 涙に濡れた真白は今、力尽きたように横になっている。

 青白くなった顔色に、泣いたせいで赤くなった目元が際立っているのを見ていると、無理やり聞き出そうとした自分を責めずにはいられない。