「晨」

 落ち着いた様子の真白が掠れた声で、晨を呼んだ。

 それは、弱々しいながらも、どこか決意を含んだような強さも垣間見える。

「何?」

「真白は、雪の日に生まれたから、真白なんだって」

「そっか。きっと綺麗な景色だったから、ご両親は名前にしたくなったんだろうね」

 二人はソファーを背もたれにして、並んで座った。

 真白が自分の話をしようとしている。

 それだけで、晨は胸がいっぱいになった。

 一生懸命、自分のことを話す真白を見たら、泣いてしまいそうだった。

 偶然かもしれないけれど、真白が横並びになってくれてホッとした。

「どうなのかな。私にはその時の両親の気持ちなんて、わからない。もう聞くことができないから」

「……もしかして」

「二人とも死んじゃったから。私を捨てて、二人だけで……」

 両親がいないことも、家がないことも聞いていたはずなのに、改めて言葉にされると、やはりそうだったのかと実感する。

「捨ててって、どういうこと?」

「私はいらなかったんだよ。だから、一緒に死なせてくれなかった。連れて行ってくれなかった」

 晨は頭を抱えそうになり、必死に堪えた。

 真白の言いたいことはわかるようで、わからない。

 そもそも両親の死は同時なのか、たまたま続いたのかがわからない。

 病死なのか、事故なのか、も。

 連れて行ってくれなかった、とはどういう状況なのか、汲み取ってあげようにも難しい。