「俺が勝手に聞き出したんだ! 晨は隠そうとしてた!」

 紘一が叫び、後ろにいる男を振りほどこうと暴れる。

「でも、結果的に、俺たちがこいつをいじめてるって、先生にバレたんだよ。そのせいで、親の呼び出しを食らって、面倒な目に合ったんだ。全部、お前らのせいだろ?」

 晨の頭が地面に叩きつけられる。

 髪がぶちぶちと千切れ、目の前で閃光が走ったように視界が白くなる。

 意識が遠のくのを、晨は必死に手繰り寄せた。

「ぼ、僕は」

「しかも、俺の女が、女みたいなお前のことを好きになったんだってよ! 笑わせるよな? こんな陰気な奴のどこがいいんだか」

 突然、腹部を蹴られ、呼吸が止まる。

 続けざまに加えられる暴力に、抵抗する気力も体力もなくなっていた。

「やめろよ! そんなの全部、逆恨みなだけだろ!」

 紘一の大きな声に反応するように、涙が溢れてくる。

 どうして、こんなことになってしまったのだろうか。

 一体、どこで間違ってしまったのだろう。

 いじめにあっていることを、紘一に話したこと?

 友達ができて、学校が少しだけ楽しくなったこと?

 それとも、紘一と友達になったこと?