晨は真白を連れて、駅前にあるゲームセンターへやってきた。

 夕方になって、学校帰りの学生が多くなっている。

 ふと、晨は真白を見て、思った。
 
 ついこの間まで、真白も高校の制服を着ていたのだ。

 美人でスタイルのいい真白の制服姿は、きっと綺麗だっただろう。

 桜の木の下で物憂げな表情をした真白。

 煌めく太陽の下で、友達と笑って歩いている真白。

 心の傷を隠すように、教室の窓から雨の降る世界を眺める真白。

 きっと、どんな瞬間も絵になったはずだ。

 晨が同じ時を重ねていたら、その一コマ一コマが脳に刻まれ、絵にしたくなっていたかもしれない。

「晨?」

 不意に聞こえた真白の声に、晨は我に返り、反射的に笑顔を作った。

「目的の場所はあっちにあるんだ」

 晨が指差した方には、人気(ひとけ)のないパンチングマシーンがある。

「え、あれ?」

 真白は不思議そうな表情を浮かべ、晨を見つめ返す。

「意外?」

「うん……晨っぽくない」

 パンチングマシーンどころか、ゲームセンターの雰囲気から、晨は浮いている。

 中性的な見た目をしていて、大人しい雰囲気の晨は、どちらかというと図書館や美術館のような静かな場所を好むとイメージされることが多い。

 実際に、晨が好きなのは静かな場所だ。

 しかし、ここだけは例外だった。