「幸せになっちゃいけないから?」

「……うん。私は死ななくちゃいけない。なのに、どうして、まだ生きているの? どうして笑ってるの? どうして、晨との時間が楽しいと思っちゃうんだろう」

 晨は唇を噛み締め、真白の頭を引き寄せた。

 真白は素直に晨の方に頭を預け、目を擦る。

「腫れちゃうよ」

「おばけみたいになっちゃう」

「おばけの真白でも可愛いけどね。痛そうなのは見てるのが辛い」

「……うん」

 真白は小さく頷くと、そっと晨の腰に手を回し、抱き着いてきた。

 しがみ付いたと言った方がいいかもしれない。

 晨には漠然と、真白は何か縋りたいのではと思った。

「理由は教えてくれないの?」

「うん、言わない」

「……そっか」

 晨では力不足だと言われたみたいで、心が軋む。

 真白のことは一時的に面倒を見ているだけで、深く関わるつもりはなかったし、お互いのことを深く知るつもりもなかった。

 だけど、今は違う。

 真白のことを放っておけなくなっているし、心の奥にあるものを聞き出したいと思っている。

 一方で、晨の抱えている傷を真白に話すつもりはない。

 つまり、真白も同じ心境ということだろう。

 そう思うと、これ以上の追求はできなくなる。