晨は受け取ったお茶を口に含み、正面に見える海を眺めた。

 遠くまで広がる、終わりのない碧。

 空の蒼と海の碧。

 同じ系統の色でも、まったく違う。

 海と空の境が溶けて融合して、境のない世界になったら、面白みがなくなるだろう。

 空に浮かぶ雲に色の違いがなければ、空を見上げる機会は減るかもしれない。

 景色と平和な空間。

 そこに、隣から聞こえた鼻をすする音が異音として入り込んできた。

 晨は何が起こったのかわからず、慌てて真白を見て、思考が止まった。

 真白は両手で顔を覆って、すすり泣いている。

「え、なんで……?」

 晨は困り、手を彷徨わせる。

 泣いている理由も、泣いている子の慰め方もわからない。

「どうしたの? 何が嫌だった? ごめん。俺がほったらかしにしていたから、怒ってる?」

 晨の問いかけに、真白は無言で首を振る。

 手の隙間から涙が零れてきて、真白の服に染みを作った。

 晨は迷った後、そっと真白の頭を撫でた。

 細い肩がビクッと跳ねる。

 それでも抵抗する様子がなかったため、晨は何度か撫でてみた。

 しかし、一向に泣き止む気配はない。