澄んだ青空にはところどころに雲が浮かんでおり、風にゆっくり流されている。

 その間をカモメが気持ち良さそうに飛び、唄う。

 綺麗に整えられた花壇には色とりどりの花が咲き誇り、蝶々が花から花へと渡り遊び、気まぐれに晨と真白の周りをくるりと舞う。

 時折、遠くから笑い声が聞こえるが、晨の集中力を削ぐほどではなかった。

 そんな世界を、晨はフィルムに閉じ込めていく。

 匂いを感じ、温もりを感じ、陽射しを感じる。

 頬を撫でていく風が、木々を揺らして囁く。

 自然に存在する色をイラストで表現するのは難しい。

 出したい色が出せないということは、晨にも経験がある。

 頭の中にある色と温度と空気が、ディスプレイには表示されていない。

 本当は、キャンバスに絵の具で描く方が晨には合っているが、今の晨はデジタルにこだわっていた。

『晨の描く絵は、色が深いな』

 水彩画もデジタルも両方描いていた当時、友達から言われたひと言が頭から離れない。

 晨の絵を好きだとも、嫌いだとも言わなかった友達は、どんな気持ちで晨の絵を見ていたのだろうか。

 ただ、彼はデジタルのイラストより水彩画の方が好んでいるようだった。

 だから、今はもう描かない。