先程までのとろんとした雰囲気は消え、目がキラキラと輝いている。

 その表情は言葉にするまでもなく、考えていることがダダ漏れだ。

「はいはい。一緒に行きますか?」

「はい! 行きます! 先生、お弁当を作ってもいいですか?」

 晨は思わず苦笑し、頷いてやると、真白は鼻歌を歌いながら冷蔵庫を開けた。

 晨は邪魔をしないよう、隅の方でコーヒーを淹れる準備を始めた。

 コーヒー豆の上から、沸いたばかりのお湯を注ぐ。

 ふわっと豆が膨らんで、いい香りが広がった。

 一方で、真白は卵焼きを作り始めたようだ。

 晨は冷蔵庫にあった材料を思い出しながら、口元を緩める。

 料理をしない自分ではどんな弁当ができあがるのか、わからない。

 でも、料理ができなくてよかったと思った。

 なんだか、その方が得した気分になったから。

「晨、ご機嫌だね」

「え、そう?」

「うん。なんか顔がすっきりしてる」

 晨は自分の頬を撫で、ふっと笑った。

「まあ、意外と楽しみにしてるってことかもね」

「えっ⁉ 何を? お弁当? それとも、私とのおでかけ?」

 真白は慌てて晨の方へ来ると、晨のパジャマの裾を掴んで引っ張った。

 真白が跳ねる度に、晨の目の前で前髪がぴょんぴょんと弾んでいる。

 全身から喜びが溢れていて、晨は思わず笑った。

「ご機嫌なのは、真白の方だよ」

「晨もだよ、絶対! よぉし、ますます張り切っちゃうから!」

 腕まくりをした真白の頭を撫で、晨はマグカップを持って、リビングのローテーブルに置く。

 それから、カーテンを開けに窓辺へ向かった。