真白の両手首をベッドに押し付け、晨は眉間に(しわ)を寄せる。

 細くて、今にも折れそうな手首。

 真白の瞳に映る自分は、怒りと不満が爆発しそうな表情を浮かべていた。

 晨が小柄であっても、男は男だ。

 真白よりは大きいし、力もある。

 それを真白はわかっていない。

「本当に、俺が何もできないと思ってる? 俺のこと、男だって忘れた? それとも、俺のことをバカにしてる? 俺のことを揶揄って、そんなに楽しい?」

 晨の下にいる真白の目元にうっすらと涙が浮かぶ。

 晨だって、泣かせたいわけじゃない。

 晨の方が、泣きそうだ。

「真白は危機感がなさすぎる。俺は、いつだって真白に怖い思いをさせることができるんだ!」

「……晨が、私を消してくれたらいいじゃない。こんな私のこと、嫌いでしょ? ほら、今なら首を締められるよ。簡単だよ」

 ついに、真白の目から大粒の涙が零れ落ち、シーツに染みを作った。

 真白の手が晨の頬を覆う。

 ひんやりとした手が、頭に上っていた血を宥めていく。