自宅に着くと、まっすぐ水槽に向かい、腰を屈めた。

「ただいま。元気に泳いでる?」

 晨の言葉に返事をするように、三匹の橙色の金魚が尾びれを揺らす。

 それを見て満足した晨は、キッチンに行き、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す。

 帰宅したら、金魚に声をかけ、水をコップに一杯飲む。

 それが、晨の習慣だ。

 その後、軽く夕食を済ますと、大きなデスクに向かった。

 デスクの上には大きなディスプレイと液タブが置かれている。

 デスクの隣にはデザインや絵画、イラストに関する書籍がずらりと並び、その隣には文庫本がきっちりと作家順に並んだ本棚がある。

 ここが晨の仕事エリアで、一日のほとんどを過ごす場所である。

 パソコンに電源を入れると、機械音が静かな室内に響いた。