「あったかいね」

「そうだけど、それどころじゃない!」

「反応しちゃう?」

「は、反応って」

「ほら、心臓がドキドキしてるもん」

(心臓か……‼)

 晨は自分の不埒な思考に戸惑い、思わず真白の額に手を押し付けた。

「痛い……」

「ご、ごめん……違う。真白が悪いんだって。もういい加減に――」

「晨、嫌?」

 真白は晨の手をそっと払うと、胸に頬を寄せて、甘えるような仕草を見せた。

「い、嫌に決まってるでしょう⁉」

「殺したいくらい?」

 晨の上で、真白が顔を上げて見つめてくる。

 その目はそれまで見せていた目とは違っていた。

 晨は探るような視線から顔を背け、今度は華奢な肩を押してみる。

 残念ながら、ピクともしない。

「どうして、そうなるの? ほんと、もうどいて……」

 嫌だけれど、殺したいほどではない。

「だって、大事な睡眠を邪魔されたんだよ? 珍しく、よく眠れた日の朝にこんなことをされたら、怒るのが普通じゃない?」

「だから、怒ってるって!」

 晨は叫んだ。晨なりに精一杯、怒っているのだと伝えているのに、真白はどうしても納得してくれない。