「うう、ん」

 不意に真白から声が漏れる。

 いっそ勢いよく起き上がって、真白から距離を取った方が良いのかもしれない。

 そう思ったが、行動に移すことは叶わなかった。

「晨?」

「ななな、なに」

「おはよう」

「お、おはよう……じゃなくて!」

 真白はこの状態が当たり前であるかのように、自然な様子で目を擦り、晨に抱き着いたまま視線を上げた。

「バ、バカなの⁉」

「うーん、バカかも」

 くすりと笑った真白が、更にきゅっと身体を寄せる。

(柔らかい……)

 不意に過った言葉に、晨は慌てて首を振った。

「離れて!」

「いーやーだっ」

 真白は駄々をこねるように言うと、もぞもぞと動き、あろうことか、無抵抗の秋の胸の上に半身を重ねた。

 真白の顔は睫毛の本数を数えられそうなほど近く、互いの心臓が呼応しているようにさえ感じられる。