寝室問題も解決し、真白のいる日常にも慣れてきた。

 晨にとって、他人のいる時間はもっと苦痛になると思っていたが、我慢できないほどではなかった。

 問題があるとすれば。

「晨って、かわいいよね」

「……は?」

「かわいい!」

「俺はかわいくない。なぜなら、男だから」

 目の前できんぴらごぼうを口に運びながら、満面の笑みを浮かべている真白を、晨はキッと睨みつけた。

 真白は見つけたのだ。晨が嫌いな言葉を。

「泣き黒子(ぼくろ)がいいよね。薄い唇はほんのりピンクで、ブラウンベージュの髪が少し癖毛なのもいい。極めつけは、くっきり二重の大きな目だよね。ねえ、自分をモデルにしないの? 絶対にかわいい女の子のイラストが描けるのに」

 真白は目を閉じると、幸せそうに微笑み、ほうっと息を吐いた。

 晨は呆れたように大きな溜息を吐いて、静かに箸を置く。

「あのさ、もういい加減にしてよ。何回言ったら、わかるの? 俺はかわいくないし、女の子じゃないし、モデルにもしない。何が楽しくて、自分をモデルにしなくちゃいけないんだよ……」

「晨ちゃん」

「ちゃんって呼ぶな!」

 晨の叫びにも、真白は楽しそうに笑うだけで、決して反省した様子は見せない。