「こんなつもりじゃなかったの」

「うん」

 それはなんとなく、わかっていた。

 真白の様子が普通ではなかったから。

 正気を失っているようだった。

 まるで、何かに意識を乗っ取られたみたいに。

「じゃあ、どんなつもりだったのって聞かれると、ちょっと困る」

 俯いた真白の表情が暗くなり、噛んだ唇が白くなった。

 晨は頭を軽く撫で、指でそっと唇に触れる。

「そんなに噛んだら、血が出ちゃうよ」

「……そうだね」

「ねえ、真白。どうして、さっき刺して欲しくなったの?」

 真白は膝を立て、小さく丸まる。

 不意に真白の足の長さに目が行った不埒さに嫌気がさして、そっと目を逸らした。

 今、大事なのは真白の気持ちだ。