「晨?」

「あ……ごめん。なんでもない。手、見せて。深くないといいんだけど」

「大したことないよ。ちょっと掠っただけで、全然痛くないもん」

「それでも、ちゃんと消毒しよう」

 真白は渋々といった様子で、右手を差し出した。

 真白の言うとおり、傷は深くなかったようで、すでに出血は止まっている。

 沁みるかもしれないと思い、慎重に消毒をしている間、真白は表情を変えず、静かに自分の手元を見つめていた。

「終わり」

「ありがとう。晨は? 怪我してない?」

 真白は身体を起こすと、ソファーから滑り降りて、晨の正面に座った。

 まるで晨の全身をスキャンするように、頭の先から、ゆっくり視線を下ろしていく。

「大丈夫。どこも怪我してないよ」

 晨の言葉を聞き、自身のスキャンでも問題ないことがわかったのか、真白はホッと息を吐いた。

 そんな真白の様子を見ていた晨は、無意識に真白の髪を撫でていた。

 シャンプーとリンスを買えた方が良いかもしれない。

 今度の買い物リストに加えよう。