朝食を終えた二人はマンションを出て、最寄り駅を目指して歩いた。

 十分ほど歩いたところに百貨店があり、もう少し進んだところには、手頃な値段の家具や生活雑貨を置いている店がある。

 二人は迷うことなく、後者を選んだ。

「うわぁ! すごいすごい!」

 真白のはしゃいだ様子に、晨は苦笑する。

「特別なものなんて、無いでしょ? これが高級店ならわかるけど……」

 晨の言葉に、真白は力強く首を振った。

「ううん、特別だよ! 私、こういうところ、初めてなの。だから、すっごく嬉しい!」

 晨は思わず言いそうになった言葉を飲み込んだ。

 人の生きてきた道は、人の数だけある。

 真白の人生は、まだ十八年だ。

 それほど長くない真白の人生はどんなものだったのか。

 今の晨には想像すらできない。

 だったら、晨にとって当たり前のことも、真白にとって当たり前ではない可能性は充分に考えられる。