「へぇ。結構、綺麗にしてるんだ」

 リビングのラグの上に足を伸ばして座る真白が、物珍しそうに部屋を見回す。

「普通だよ。一人暮らしだから、物が少ないだけ。このリビングとダイニングキッチン、向こうに一部屋あるだけの狭い家だけど、いい?」

「いいって?」

「だから、少しの間だけなら、ここに居ていいから。この家で我慢できるかってこと」

「えっ、いいの?」

 その瞬間の真白の表情に、晨の心は持っていかれた。

 パッと何かが弾けるような、でも、どことなく不安げな、とても複雑そうな表情。

 そもそも『殺してくれ』と言って回る時点で、複雑な事情があるのかもしれない。

 どこまで本気かはわからないが、連れてきてしまった以上、何も聞かないわけにはいかないだろう。

 晨は、揺れる視線で見つめてくる真白の向かいに座った。

「あのまま放っておいたら、また危ないことをするよね?」

 晨をジッと見ていた真白の視線が、わかりやすく泳ぐ。

「放っておいてもいいのに……」

「どうして、あんなことをしてたの?」

 真白は長い髪を指で遊ばせ、わざとらしく何かを歌い出す。

 誤魔化すのは下手らしい。