モブ子(仮称)について。
今日一日観察していて気がついたことを書いてみる。
……
プレゼントが出来る!
これにゃあオレもびっくりしたぜ。
女心の「お」の字もしらねえオレなワケだが、見ているとどういう訳かある冒険者から色んなもん渡されてる。
なんでだ?
代わりに何かお礼をモブ子がする訳じゃああるまいし。
……それにしても。
「うれしいわ ありがとう ぼうけんしゃさま」
モブ子の分際で、ハートマークの吹き出しまで出して。
……面白くねえ。
試しに、薬草でもあげてみるか。
「ありがとうございます」
ザ・定型文!
くそう、こうなったら何がなんでもモブ子にお礼を言わせてやる!
……
二十分が経過して。
テメエの持ちモンの中身がすっからかんになるまで、モブ子に貢いだオレは、三千ゴルド分のアイテムを失ったと気づいて、ガクッとモブ子の足元で地面に這いつくばった。
くそう。
モブ子、意外と攻略が難しい。
そのほとんどが、「ありがとうございます」だったが……
そうだ。
一回だけ、「うれしいわ」が付いたな。
たしか……
そうだ、日輪草をあげた時だ。
日輪草は黄色いヒマワリみたいな花を咲かすレアな薬草だ。
体力を八割回復してくれる。
……花が良いのか?
オレはリンクスの花屋に駆け込んで、一番安くて色気も何にもねえ──もうそれしか買えなかった──、チューリップの花束を二百ゴルドで買った。
駆け足で村の入口に戻った時、また同じ冒険者──ちょっと太ってメガネの……オタクみてえな──に、オレが買ったのよりいい花束を渡されていた。
「まあ! なんてきれいな はなたば! うれしいわ ありがとう ぼうけんしゃさま」
……はん。
なんだよ。
誰でもいいんかい。
……モブ子のくせに、生意気だぜ。
オレは、心底腹が立った。
自分でも何でこんなに腹が立ってるのかわからない。
「あ、あのさ、ハンナちゃん。こんど一緒に……」
「ようこそ はじまりのむら リンクスへ! みてみて このおはな キレイでしょう」
「やっぱり、だめか……」
だはははは!
おいおい、コイツはモブなんだよ。
話しかけた所でひとつしか喋れないんだよ!
それになんだよ、ハンナって。
名付け親アンタか?
も少しセンスってもんがあんだろがよ。
とぼとぼと、なぜか肩を落として帰るそいつに、心の中は爆笑だ。
と、気づくとモブ子がこっちを見ている。
あれ。
何を見てるんだろう。
コイツから目を向けてくることなんてあったっけ。
……あ。
「これ? これが欲しいんか?」
「ようこそ はじまりのむら……」
「わーった、わーった。このアルベルト様が直々にお前にプレゼントしてやろう」
そう言って、二百ゴルドで買ったチューリップの花束をあげた。
「まあ! なんてきれいな はなたば! うれしいわ ありがとう ゆうしゃさま」
……
いま、なんつった?
ゆうしゃさま……って言わなかったか?
同じ言葉、同じ行動しかできないモブ子が、ふた束の花束を手に、うっとりと頬を赤らめている。
そしてこっちを向いて、にこっと笑った。
その時、初めてだった。
初めて認識した。
……
オレは、モブ子に恋しているということに。
今日一日観察していて気がついたことを書いてみる。
……
プレゼントが出来る!
これにゃあオレもびっくりしたぜ。
女心の「お」の字もしらねえオレなワケだが、見ているとどういう訳かある冒険者から色んなもん渡されてる。
なんでだ?
代わりに何かお礼をモブ子がする訳じゃああるまいし。
……それにしても。
「うれしいわ ありがとう ぼうけんしゃさま」
モブ子の分際で、ハートマークの吹き出しまで出して。
……面白くねえ。
試しに、薬草でもあげてみるか。
「ありがとうございます」
ザ・定型文!
くそう、こうなったら何がなんでもモブ子にお礼を言わせてやる!
……
二十分が経過して。
テメエの持ちモンの中身がすっからかんになるまで、モブ子に貢いだオレは、三千ゴルド分のアイテムを失ったと気づいて、ガクッとモブ子の足元で地面に這いつくばった。
くそう。
モブ子、意外と攻略が難しい。
そのほとんどが、「ありがとうございます」だったが……
そうだ。
一回だけ、「うれしいわ」が付いたな。
たしか……
そうだ、日輪草をあげた時だ。
日輪草は黄色いヒマワリみたいな花を咲かすレアな薬草だ。
体力を八割回復してくれる。
……花が良いのか?
オレはリンクスの花屋に駆け込んで、一番安くて色気も何にもねえ──もうそれしか買えなかった──、チューリップの花束を二百ゴルドで買った。
駆け足で村の入口に戻った時、また同じ冒険者──ちょっと太ってメガネの……オタクみてえな──に、オレが買ったのよりいい花束を渡されていた。
「まあ! なんてきれいな はなたば! うれしいわ ありがとう ぼうけんしゃさま」
……はん。
なんだよ。
誰でもいいんかい。
……モブ子のくせに、生意気だぜ。
オレは、心底腹が立った。
自分でも何でこんなに腹が立ってるのかわからない。
「あ、あのさ、ハンナちゃん。こんど一緒に……」
「ようこそ はじまりのむら リンクスへ! みてみて このおはな キレイでしょう」
「やっぱり、だめか……」
だはははは!
おいおい、コイツはモブなんだよ。
話しかけた所でひとつしか喋れないんだよ!
それになんだよ、ハンナって。
名付け親アンタか?
も少しセンスってもんがあんだろがよ。
とぼとぼと、なぜか肩を落として帰るそいつに、心の中は爆笑だ。
と、気づくとモブ子がこっちを見ている。
あれ。
何を見てるんだろう。
コイツから目を向けてくることなんてあったっけ。
……あ。
「これ? これが欲しいんか?」
「ようこそ はじまりのむら……」
「わーった、わーった。このアルベルト様が直々にお前にプレゼントしてやろう」
そう言って、二百ゴルドで買ったチューリップの花束をあげた。
「まあ! なんてきれいな はなたば! うれしいわ ありがとう ゆうしゃさま」
……
いま、なんつった?
ゆうしゃさま……って言わなかったか?
同じ言葉、同じ行動しかできないモブ子が、ふた束の花束を手に、うっとりと頬を赤らめている。
そしてこっちを向いて、にこっと笑った。
その時、初めてだった。
初めて認識した。
……
オレは、モブ子に恋しているということに。