「ようこそ はじまりのむら リンクスへ! みてみて このおはな キレイでしょう」

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 きれいなはなたば を プレゼント した!

「まあ! なんてきれいな はなたば! うれしいわ ありがとう ゆうしゃさま」

 ……

 うれしいわ ありがとう ゆうしゃさま。

 ……

 ありがとう ゆうしゃさま。

 ……

 ……

「剣士アルベルト、お前をこのパーティから追放する!」
「はあっ? なんでだよっ!」

 オレはパーティのリーダー……クラウスが言い終わる前に、喰らいついた。
 はあ、とクラウスは大きなため息をつく。

「……そういうところだ、アルベルト。リーダーである俺の、やることなすこと全方位に噛み付いてくるお前の性格。……合わないんだよ。正直うんざりだ」
「でもよっ! オレだってパーティに貢献してきたろ? なあ、エミーリア、グレーテ!」

 オレが前衛で守ってきた白魔法使いと踊り子はリーダーのナイトにすがった。

「ごめんねえ、アルベルトちゃん。あたし、やっぱり、クラウスの言うことに一理あると思うの。……ねえ、エミーリア」
「……ごめんなさい、アルベルトさま……お許しを」
「……と、言う訳だ。協調性に欠けたお前はパーティには必要ない。さっさと出ていきな」

 ……勇者だかなんだか知らねえが。
 両手に花を持って、浮かれやがって。

「なんだよなんだよ! わかったよ、そんなパーティ、こっちから願い下げだよ! あばよっ!」

 オレはリンクスいちの高級宿屋を飛び出した。

 ……

 村の大通りのあっちこっちには駆け出しの冒険者ばかり。
 まだ不慣れな連中が、新しいパーティを探して右往左往。

 ──ちっ。オレもコイツらみたいにやり直せってか。

「あの、勇者様ですか?」

 気弱そうな駆け出しの冒険者に声を掛けられた。
 ああ。
 なるほどな。

「そう見えるか……見えるよな。……わりぃ。オレ、勇者様じゃねえんだわ」

 リンクスは銅鉱山で栄える比較的大きな村。
 極めて良心的な価格で安価な青銅製の武器防具が揃うので、ここを「始まりの村」と呼び最初の拠点とする冒険者も多い。
 で、オレが身につけているのは「真鍮製」の鎧。
 青銅製の武具と違い金色に見えるから、黄金の鎧を身につけた一流騎士に見えるのだろう。
 でも、真鍮も……黄銅。
 銅製であることに違いは無い。
 何を隠そうコイツも、このリンクスで作ってもらった初級の防具なのだ。
 大好きな金色に見えるから。
 それだけの理由で鍛冶屋にこしらえてもらった、ピカピカの鎧。
 黄金に似た、真鍮。
 勇者に似た、ただの剣士。

 ……ニセモノの、勇者。
 オレにぴったりの名前だ。

 そんなことを考えながら歩いているうちに、村の入口に着いた。
 なんて言ったかよく分からない紫の花が、素朴な花壇に植えられている。
 その中で、ジョウロ片手にぼーっと突っ立っている村娘に目がいった。
 身に纏う服は、茶色のワンピースにエプロン。
 その辺の、どこにでも居る村娘だ。
 ただ、きれいな赤毛のお下げが、夕焼けによく映えて。
 その後ろ姿はやけに。

 ──やけに、綺麗に見えた。

「……おい、どうした、そろそろ暗くなるぞ」

 するとくるりと回って、その子はそばかすいっぱいに笑顔で答えた。

「ようこそ はじまりのむら リンクスへ! みてみて このおはな キレイでしょう」