「何がほら、だ!」
まあまあ、失言だったかしら。
それにしても朝から怒鳴りっぱなしで疲れない?
いえ、これは若さね。
朝から孫のテンションが高いわ。
祖母ちゃんはついていけないのだけれど?
目の前には銀髪碧眼のあちらの世界によくいる乙女ゲームの攻略キャラ並みに王子然とした、あ、王子だったわね。
麗しき王子様が……あらあら?
「お顔が残念でしてよ?」
「ラビアンジェ=ロブール!!
無才無能なお前が王族である私に暴言か!!」
ふふふ、うっかり火に油を注いだみたいね?
聴力は一般的16才並みのはずだから、更に声を張り上げなくても聞こえるのよ?
むしろ耳が痛いくらい。
でも私の微笑みはデフォルトだから崩れないわ。
「いいえ?
ただ、お供の怖いお顔で睨む騎士科の男性と、婚約者以外の女性を連れて教室中に響く怒声を早朝から撒き散らすのは、それこそ王族としていかがなものか、とは思っておりますの。
ほら、周りのか弱い女性達へのイメージも大切でしょ?」
その言葉にうっ、と詰まるお怒り孫と背後のお供君。
「お義姉様!
王子様のお顔に失礼でしてよ!」
うふふ、お供君の後ろからひょっこり出現ね。
うちの従妹で義妹は今日も甲高い声で元気だこと。
大柄なお供君の陰になってて、いたのを一瞬忘れていたわ。
「そうよねえ、シエナ。
王子殿下のご尊顔に失礼よね?」
「は?!
何を言って……」
「だって、微笑めば美しいはずのご尊顔をそのように歪めては残念と思うのは、一女性として当然ですもの。
同じ意見で嬉しいわ、シエナ」
うふふ、と微笑みかける。
「王子殿下ご自身であっても、麗しいご尊顔を崩すなんて世の中の損失ですものね。
それよりもこんなにも殿下のご尊顔を敬愛する私の言葉の何が暴言なのかしら?
優しい淑女でもある従妹で義妹のシエナなら、教えてくれるわよね?」
更に優しく微笑んで義妹の緊張感を解きほぐすよう努めてみるわ。
どうしてだか顔を強張らせるのだもの。
「そ、れは……だから、怒ったお顔も……」
「まあ、シエナ。
駄目よ?
殿下は王族でしょう?
なのにこのように未来を担う学生の、非公式とはいえ社交の場たる教室で、早朝から怒りを表情に出すはずがないじゃない。
そうでしょう?
それもここは成績だけでいえばDクラスなの。
学年違いとはいえAクラスのあなた達がそんな事を率先して伝えれば、下手をすればこの場の生徒全員を下に見ているなんて捉えられるのに、どうするの?
これはあなたの淑女性にも影響しない?」
「待て、下などとっ」
「勝手なっ」
「そんなっ」
孫もお供君も従妹で義妹も慌ててどうしたのかしら?
「そうよね。
だから女性の感性が少し残念と感じさせている。
ただそれだけの魅力的なご尊顔で合っているわよね」
曇りなき微笑みを向けるとわかってくれたのね。
「ラビアンジェ=ロブール。
後で生徒会室に来い。
あ、いや、来て欲しい」
「お聞き致しましたわ、殿下」
命令と見せかけてからの、ちゃんと言い直せたわね。
良くできました、孫ちゃん。
えらいえらい。
どこかバツの悪そうな顔になった3人は、憮然としながらもすごすごと出て行ったわ。
そうして午前の授業を受け、お昼は持参したお弁当よ。
食堂もあるのだけれど、正直貴族の豪華な学食も毎日はつらいし、何より静かに食べたいぼっち飯推奨派なのよ、私。
それで今世で入学した時に前々世も通っていた頃を思い出したの。
前々世では人気のない、誰も来ない忘れられた用具室を空間ごと切り離して出入り口に目くらましの魔法をかけて使っていたわ。
確認したら急死した後もその魔法が生きていたのよね。
だから普段はこの特等室を使っているわ。
本日のお弁当は仲良し料理長さんに鮭サンドをお願いしてあったの。
ほろほろとした鮭と、その昔伝授したマヨネーズのハーモニーは絶品間違いなし。
誰にも絡まれる事なく、ひたすらに料理に酔いしれるぼっち飯は最高ね!
「いただきます。
……うふふ、やっぱり美味しいわ。
素敵ね」
パクリと一口食べて絶賛する。
そしてまたパクリ、パクリ……。
「ご馳走さま。
今日も美味しかったわ、料理長さん。
ありがとう」
帰ってからもちゃんと伝えるけれど、感謝の言葉はその場で口に出すようにしているの。
気持ちよく生きるコツね。
軽く仮眠を取って、教室に戻って、授業を受けて、帰宅する。
部屋に戻ってお風呂に入ってから、摘んであった野草や仲良しさん達からのいただき物のハムを調理して食べる。
歯磨きしてベッドに横たわる。
今日も穏やかな1日に感謝よ。
まあまあ、失言だったかしら。
それにしても朝から怒鳴りっぱなしで疲れない?
いえ、これは若さね。
朝から孫のテンションが高いわ。
祖母ちゃんはついていけないのだけれど?
目の前には銀髪碧眼のあちらの世界によくいる乙女ゲームの攻略キャラ並みに王子然とした、あ、王子だったわね。
麗しき王子様が……あらあら?
「お顔が残念でしてよ?」
「ラビアンジェ=ロブール!!
無才無能なお前が王族である私に暴言か!!」
ふふふ、うっかり火に油を注いだみたいね?
聴力は一般的16才並みのはずだから、更に声を張り上げなくても聞こえるのよ?
むしろ耳が痛いくらい。
でも私の微笑みはデフォルトだから崩れないわ。
「いいえ?
ただ、お供の怖いお顔で睨む騎士科の男性と、婚約者以外の女性を連れて教室中に響く怒声を早朝から撒き散らすのは、それこそ王族としていかがなものか、とは思っておりますの。
ほら、周りのか弱い女性達へのイメージも大切でしょ?」
その言葉にうっ、と詰まるお怒り孫と背後のお供君。
「お義姉様!
王子様のお顔に失礼でしてよ!」
うふふ、お供君の後ろからひょっこり出現ね。
うちの従妹で義妹は今日も甲高い声で元気だこと。
大柄なお供君の陰になってて、いたのを一瞬忘れていたわ。
「そうよねえ、シエナ。
王子殿下のご尊顔に失礼よね?」
「は?!
何を言って……」
「だって、微笑めば美しいはずのご尊顔をそのように歪めては残念と思うのは、一女性として当然ですもの。
同じ意見で嬉しいわ、シエナ」
うふふ、と微笑みかける。
「王子殿下ご自身であっても、麗しいご尊顔を崩すなんて世の中の損失ですものね。
それよりもこんなにも殿下のご尊顔を敬愛する私の言葉の何が暴言なのかしら?
優しい淑女でもある従妹で義妹のシエナなら、教えてくれるわよね?」
更に優しく微笑んで義妹の緊張感を解きほぐすよう努めてみるわ。
どうしてだか顔を強張らせるのだもの。
「そ、れは……だから、怒ったお顔も……」
「まあ、シエナ。
駄目よ?
殿下は王族でしょう?
なのにこのように未来を担う学生の、非公式とはいえ社交の場たる教室で、早朝から怒りを表情に出すはずがないじゃない。
そうでしょう?
それもここは成績だけでいえばDクラスなの。
学年違いとはいえAクラスのあなた達がそんな事を率先して伝えれば、下手をすればこの場の生徒全員を下に見ているなんて捉えられるのに、どうするの?
これはあなたの淑女性にも影響しない?」
「待て、下などとっ」
「勝手なっ」
「そんなっ」
孫もお供君も従妹で義妹も慌ててどうしたのかしら?
「そうよね。
だから女性の感性が少し残念と感じさせている。
ただそれだけの魅力的なご尊顔で合っているわよね」
曇りなき微笑みを向けるとわかってくれたのね。
「ラビアンジェ=ロブール。
後で生徒会室に来い。
あ、いや、来て欲しい」
「お聞き致しましたわ、殿下」
命令と見せかけてからの、ちゃんと言い直せたわね。
良くできました、孫ちゃん。
えらいえらい。
どこかバツの悪そうな顔になった3人は、憮然としながらもすごすごと出て行ったわ。
そうして午前の授業を受け、お昼は持参したお弁当よ。
食堂もあるのだけれど、正直貴族の豪華な学食も毎日はつらいし、何より静かに食べたいぼっち飯推奨派なのよ、私。
それで今世で入学した時に前々世も通っていた頃を思い出したの。
前々世では人気のない、誰も来ない忘れられた用具室を空間ごと切り離して出入り口に目くらましの魔法をかけて使っていたわ。
確認したら急死した後もその魔法が生きていたのよね。
だから普段はこの特等室を使っているわ。
本日のお弁当は仲良し料理長さんに鮭サンドをお願いしてあったの。
ほろほろとした鮭と、その昔伝授したマヨネーズのハーモニーは絶品間違いなし。
誰にも絡まれる事なく、ひたすらに料理に酔いしれるぼっち飯は最高ね!
「いただきます。
……うふふ、やっぱり美味しいわ。
素敵ね」
パクリと一口食べて絶賛する。
そしてまたパクリ、パクリ……。
「ご馳走さま。
今日も美味しかったわ、料理長さん。
ありがとう」
帰ってからもちゃんと伝えるけれど、感謝の言葉はその場で口に出すようにしているの。
気持ちよく生きるコツね。
軽く仮眠を取って、教室に戻って、授業を受けて、帰宅する。
部屋に戻ってお風呂に入ってから、摘んであった野草や仲良しさん達からのいただき物のハムを調理して食べる。
歯磨きしてベッドに横たわる。
今日も穏やかな1日に感謝よ。