「シュア、こっちは終わった。
1年生と3年生達も合流……」
言いながら後ろに各学年の生徒会役員達を3人引き連れてヘインズがガチャリとドアを開けた。
その瞬間、義妹がはっとした顔をして叫んだ。
「お義姉様が私と同じ馬車に乗りたくないって仰ったの!
私なんてロブール家に相応しくない養女だって!
義妹ですらない、嫌いだって!」
ぽろぽろと涙を流し、言い終わると顔を覆って、わっ、と泣いた。
「シエナ、またラビアンジェ公女に虐められたのね!」
義妹と同じクラスの侯爵令嬢が駆け寄り、隣に座っていつものように慰め始めた。
「い、いいの、私の事は。
お義姉様は素直な方だもの。
私が努力してAクラスに入ったのも、どうせズルしたんだろうって、全て気に入らないだけなの」
義妹はそう言って涙を溢れさせながら少し明るく健気な様子を振る舞う。
「でもお兄様があの馬車を用意して下さったのはお義姉様の為でもあったのに、余計な事をするなって言えって!
私なんかと一緒に登校させるなんて、お兄様を許せないって!
私、私っ……」
しかし徐々に悲壮感が漂いながら、再び感情的に告げ始めた。
冷静に正面から観察していると、なるほど、緩急を上手く使っている。
「何て方!
私達はシエナが努力してAクラスに入ったってちゃんとわかっているわ!」
「そうですわ。
そもそも努力しないからDクラスになんていらっしゃるのに。
私の可愛い後輩を虐めるなんて、いくらラビアンジェ公女でも許せませんわ」
義妹の言葉に、隣に座る1年生と俺が座っていた場所に腰かけた3年生の令嬢達が憤慨する。
どうでもいいが、公女である妹は名前呼びをこの2人に許した事はあるのだろうか。
しかし3年生の、生家が富裕層に当たる平民の男子役員は冷めた目で感情的な令嬢達を一瞥して奥の自分の机の方へ行ってしまう。
恐らく彼はここが本当の意味では仮初めの学歴差社会で、卒業後は社会的な身分差社会に戻ると理解している。
それに常に冷静に判断しているようだ。
今の生徒会役員の中で唯一、彼だけが妹を貶した事が1度もない。
「貴方もそう思いますわよね!」
「いえ、その場を見た事がありませんから」
「もう!
これだから富裕層とは言え生家が爵位の無い方は日和見主義で嫌になるわ!」
こんな風に、絶対に同意しない。
地味に平民だと貶すのはよろしくないだろうに。
男子役員は首を竦めていつものように書類を整理し始めた。
なかなか良い性格をしていると毎回感心する。
「ですからお兄様、私、お義姉様の事をお伝えできませんでしたの。
お兄様が私とお義姉様の2人を想って新調して下さったご好意を踏みにじるようで……ごめんなさい」
心苦しそうに涙に濡れた瞳こちらへ向けた。
「ロブール公子、どうかシエナを許して差し上げて下さいませ。
兄を想って言えなかった優しさ故なのです。
妹心をどうか汲んで下さいまし」
「お兄様」
「「ロブール公子」」
義妹の同級生の言葉を皮切りに、懇願するように下級生達はこちらを一斉に見つめてきた。
いつも思うが、何だ、この茶番。
対して俺達4年生はドン引きだ。
向こうの3年男子はそもそも一線を引いているが、俺もそっちに行きたい。
他の2人はかなり気まずそうでもある。
俺とは全く目線が合わず、些か目が死んでないか?
大方いつもならここで自分達もこの茶番に混ざって義妹を持ち上げ、妹を貶しまくっていたのを理解しているんだろう。
ため息が漏れた。
「シエナ、はっきり伝えておく。
私が何も確認しないまま、ラビアンジェを責める事はない」
「お、お兄様?!」
いつもならここで話を切り上げる。
明らかな嘘かどうかまではわからない事ばかりだったし、妹と違い努力はしている義妹に限ってという先入観もあった。
何より他ならぬ王族やその取り巻き達が騒いで義妹が泣いてしまえば、こちらの疑問すらも悪く取られて話にならなくなってしまうからだ。
だが、今日はそうするつもりはない。
1年生と3年生達も合流……」
言いながら後ろに各学年の生徒会役員達を3人引き連れてヘインズがガチャリとドアを開けた。
その瞬間、義妹がはっとした顔をして叫んだ。
「お義姉様が私と同じ馬車に乗りたくないって仰ったの!
私なんてロブール家に相応しくない養女だって!
義妹ですらない、嫌いだって!」
ぽろぽろと涙を流し、言い終わると顔を覆って、わっ、と泣いた。
「シエナ、またラビアンジェ公女に虐められたのね!」
義妹と同じクラスの侯爵令嬢が駆け寄り、隣に座っていつものように慰め始めた。
「い、いいの、私の事は。
お義姉様は素直な方だもの。
私が努力してAクラスに入ったのも、どうせズルしたんだろうって、全て気に入らないだけなの」
義妹はそう言って涙を溢れさせながら少し明るく健気な様子を振る舞う。
「でもお兄様があの馬車を用意して下さったのはお義姉様の為でもあったのに、余計な事をするなって言えって!
私なんかと一緒に登校させるなんて、お兄様を許せないって!
私、私っ……」
しかし徐々に悲壮感が漂いながら、再び感情的に告げ始めた。
冷静に正面から観察していると、なるほど、緩急を上手く使っている。
「何て方!
私達はシエナが努力してAクラスに入ったってちゃんとわかっているわ!」
「そうですわ。
そもそも努力しないからDクラスになんていらっしゃるのに。
私の可愛い後輩を虐めるなんて、いくらラビアンジェ公女でも許せませんわ」
義妹の言葉に、隣に座る1年生と俺が座っていた場所に腰かけた3年生の令嬢達が憤慨する。
どうでもいいが、公女である妹は名前呼びをこの2人に許した事はあるのだろうか。
しかし3年生の、生家が富裕層に当たる平民の男子役員は冷めた目で感情的な令嬢達を一瞥して奥の自分の机の方へ行ってしまう。
恐らく彼はここが本当の意味では仮初めの学歴差社会で、卒業後は社会的な身分差社会に戻ると理解している。
それに常に冷静に判断しているようだ。
今の生徒会役員の中で唯一、彼だけが妹を貶した事が1度もない。
「貴方もそう思いますわよね!」
「いえ、その場を見た事がありませんから」
「もう!
これだから富裕層とは言え生家が爵位の無い方は日和見主義で嫌になるわ!」
こんな風に、絶対に同意しない。
地味に平民だと貶すのはよろしくないだろうに。
男子役員は首を竦めていつものように書類を整理し始めた。
なかなか良い性格をしていると毎回感心する。
「ですからお兄様、私、お義姉様の事をお伝えできませんでしたの。
お兄様が私とお義姉様の2人を想って新調して下さったご好意を踏みにじるようで……ごめんなさい」
心苦しそうに涙に濡れた瞳こちらへ向けた。
「ロブール公子、どうかシエナを許して差し上げて下さいませ。
兄を想って言えなかった優しさ故なのです。
妹心をどうか汲んで下さいまし」
「お兄様」
「「ロブール公子」」
義妹の同級生の言葉を皮切りに、懇願するように下級生達はこちらを一斉に見つめてきた。
いつも思うが、何だ、この茶番。
対して俺達4年生はドン引きだ。
向こうの3年男子はそもそも一線を引いているが、俺もそっちに行きたい。
他の2人はかなり気まずそうでもある。
俺とは全く目線が合わず、些か目が死んでないか?
大方いつもならここで自分達もこの茶番に混ざって義妹を持ち上げ、妹を貶しまくっていたのを理解しているんだろう。
ため息が漏れた。
「シエナ、はっきり伝えておく。
私が何も確認しないまま、ラビアンジェを責める事はない」
「お、お兄様?!」
いつもならここで話を切り上げる。
明らかな嘘かどうかまではわからない事ばかりだったし、妹と違い努力はしている義妹に限ってという先入観もあった。
何より他ならぬ王族やその取り巻き達が騒いで義妹が泣いてしまえば、こちらの疑問すらも悪く取られて話にならなくなってしまうからだ。
だが、今日はそうするつもりはない。