「ラビの手柄なのにぃ……」
「ふふふ。
実際に動いた人達こそが称賛されるべきよ」

 もう、なんなのかしら。
コロンと後ろに転がったと思ったら、駄々っ子みたいにバタバタする白い腹毛がむしろ凶悪なのだけれど!

 お腹は動物の急所のはずなのに、そんなに無防備にさらして私をどうしたいの?!
誘っているの?!
そうなんでしょ?!

「違うから。
誘ってないから」

 ピタリと動きを止めて冷たくもキュートな眼差しで釘を刺されたわ。

「……そ、そう……」

 ……そうね、まさに私達って以心伝心じゃないかしら。

「今日は寝室を別に……」
「駄目よ。
我慢しているわ」
「変態の顔が暴力的・・・・」
「そんな……不可抗力だわ」

 ああ?!
キャスちゃんてばムクリと起き上がってカップを抱えたわ!
それはお腹ガードね?!
特にふわふわな腹毛をガードされたわ?!
お狐様がコアラ様にチェンジね?!

 キャスちゃん曰く暴力的変態顔らしいこのお顔を、悪女ステータスに全集中して淑女のお顔に戻す。

「……まあいいよ」
「ふふふ、ありがとう」

 本日何度目かの家庭内別居の危機を乗り切れたみたいね。
良かった。

 さてさて綿に絡めてどうこの国に貢献したのか、よね。

「そもそもの理由はこのロベニア国の国土の30%が海に面した土地にあるにも関わらず、塩害対策が遅れているのも問題でしょ?
魔法に頼りきっているし」
「まあ否定はしないよ」

 キャスちゃんたら渋面も可愛らしさが爆発しているわ。

 この国は土地だけなら広大な国土と言えるのよ。
海と隣国のそれぞれに面している、そうね、あちらの世界のヨーロッパ諸国の1つをイメージしてもらえるといいかもしれないわね。

 海に面している土地にはすこし前に触れたように塩害が見られていて、土地は広大でも作物が育ちにくいの。

 しかも100年に1度起こるかどうかレベルのハリケーンと大潮が重なって甚大な物理的被害だけでなく塩害に拍車をかけてしまったの。
そのせいで海に面する領土のいくつかが再び寂れてしまったわ。

 ただし当然だけれど、ここはそういう国だし小さなハリケーンは定期的に起こるわ。
避難訓練はもちろん、魔法の世界だからそういう時に発動する緊急魔法で領民達の避難経路は確保していたの。

 これに関しては国も介入しているから、避難経過の整備不良も起こっていなくて人命に関する被害は0よ。

 それに海を挟んだ向こう側の隣国からすれば、この土地はある意味侵略のうまみがないの。
何かしらちょっかいをかけて難民として海を渡って自国に来られる方が困るみたいね。

 そちら側の国との同盟が滞りなく締結し続けているのは良い所と言うべきかしら?

「学園祭の補助金は年度末に決められて新年度開始時には割り振られるから、早めに準備を開始して問題ないじゃない?」
「というか1年Dクラスはそもそも早くから準備しないと間に合わないんでしょ?」
「そうよ。
だからたまたま色々とタイミングが良かったのよ」

 だって学園祭とは名ばかり。

 売り上げを最終学年での研究資金に補填する事を許された数少ない機会よ。

 この学園では研究を行い、最終学年でその成果を各クラス単位で発表するの。
研究の補助金は成績順はもちろんだけれど、対外的な対応をする学園祭での評価も加味される。
まあ大抵はここでもDクラスは最低額になるわね。

 その研究発表の内容次第で卒業後の待遇が変わる事もあるから、成績が上のクラスほどお金に物を言わせて成果をあげようと躍起になるわ。

 クラス内でグループ分けをして、何かしらの分担をした上で1つのテーマを発表する形を取る事が多いかしら。
グループ分けは自由なのだけれど、大抵はクラスの中でも共通の時間を取りやすい専攻科別に分かれやすいの。

 何を専攻するのかは2年になってから、つまり今の私の学年になってから決めるシステムよ。
学年全体で専攻科の定員は決まっているから、必ずしも望む科を専攻できるとは限らない。
けれど将来に関わる事でもあるから、ある程度の融通は利くわ。

 専攻科目は淑女科、経営科、魔法科、騎士科、冒険科、魔法具科よ。

 クラスは共通科目の学力で分かれるけど、専攻科は主に実技試験で成績が決まるわ。

 もちろんA、Bクラスの貴族女子達に人気なのは淑女科よ。
次が魔法科かしら?
従妹で義妹のシエナは既に淑女科を決めているのですって。

 上位クラスの男女に不人気なのは冒険科、次いで魔法具科ね。
ダントツってやつよ。