「ラビが時々自家発電で楽しむ為に自分で書いてる小説を読むのも好きだよ。
他の皆も好きだから、早く新刊出してね」
「ふふふ、読者がいると燃えるから頑張るわ。
前世でもやっていた趣味がこの世界で活きるなんて、恥ずかしいけど楽しいわね」

 でも漫画は……なかなか難しくて。

 前世では夫にも子供達にも【ある意味画伯】との称号を頂いたくらいに才能がないわ。
ある意味って何なの。
見たら笑われる画伯って……あらあら?
こっち方面は間違いない無才だと思っていたけれど、絵で笑わせる才能はあるのかしら?

 まあ少なくとも小説の挿絵には不向きだから、せめて誰かに挿し絵なんかを付けて欲しい今日この頃よ。

「そういえばゴムの木を探そうとしなかったのはどうして?
それにどうしてアメーバから作ろうと思ったの?」
「あら?
一応ゴムの木があるかどうかは珍しくお父様にもお兄様にも聞いてみたわよ?
キャスちゃん達にも聞いたでしょ?
アメーバは言って無かったかしら?
そこらへんにいたからなんとなくよ。
伸びそうだったし、硬さが自転車のタイヤみたいだったもの。
それにアメーバの捕獲も下処理もお子ちゃまにお願いしても安全にできるでしょう」
「そうだけど、木は聞くだけですぐに諦めたでしょ」
「だって、前世の私はラテックスアレルギーだったもの」
「ラテックス?
ああ、天然ゴムのアレルギー」

 キャスちゃんとは記憶を共有しているから、こちらにはないラテックスも通じて便利よね。

「痛みも嫌だけれど、痒いのもなかなか我慢できないのよ?」
「確かにラビの前世は使い捨てのマスクするだけで顔が腫れてたね。
でもだからってアメーバには普通手をださないと思う」

 呆れたお顔をしてもつぶらな瞳がチャーミングね。

 ゴム素材って色々便利だし、ラビアンジェとして転生してからゴムを作れないかずっと試行錯誤していたの。

 もちろんゴムだけじゃないのよ。

 このログハウスに越して来てからは監視のない、ある程度自由な時間ができたから他にも色々捗ったわ。
その1つがゴムだっただけよ。

 でもゴムの木を探していないわけでもないわ。
あったらきっと便利だもの。

 ただキャスちゃんにも言った通り、前世の私はラテックスアレルギーでね。
ラテックス製の物に触ると痒くなった記憶があって、どうせならこの世界独自の何かで作る事に決めたの。

 この世界のアメーバっていうのは、核のできる前のスライムよ。
核、正確には魔石核といって、核の有無で魔獣なのか動物なのかが決まるの。

 アメーバは核が無いから厳密には魔獣ではない。
いや、核ができるのだから魔獣だ。

 というのがアメーバ魔獣論争と呼ばれていて、ここは専門家も意見が分かれるところね。

 アメーバは無色透明でベタベタしたゼリー状。
体にくっついたゴミなんかをゆっくり中に取り込んで大きくなるわ。
大きさや厚みは……そうねえ、日本で言うところの和室に使うちゃんとしたお客様用座布団くらいかしらね。

 核ができ始めると透明から半透明になってベタベタ感は無くなりつつ、最低でも2倍には膨れてお餅みたいに柔らかくなるの。
幼児の拳くらいの核ができて何かしらの意思を持ったように動き始めると、スライムとして捕食を始めるわ。

 色はあちらの世界みたく水色が1番多くて、次が緑かしら。
他に桃、紫、黒、白がいたわね。
金や銀のスライムにはお目にかかった事はないけど、スライムって生態がわからない事も多いらしいから、いるかどうかは否定はしないわ。

 アメーバは森や水路なんかにちょろちょろいるの。
本当に地味にゆっくり移動しているし、どこから現れるのか謎な生き物よ。
何かを襲うわけでもなく、でも時々漂ってたアメーバが溜まって水路を詰まらせる事もあるから、プチ害獣扱いね。

 そういう時は冒険者ギルドに依頼票が来て、大抵は孤児院の孤児達に打診されて子供達がお小遣い稼ぎで駆除してくれるのよ。
依頼料は良くても銀貨が何枚かだし、冒険者には元孤児院出身も多いからアメーバ依頼は孤児院を優先しても文句は出ないわ。