「違わない。
お前は1度もこの者ばかりか誰かを貶めた事はない。
言い返したり反撃したり、生家の権力を使ったという事実もこの短時間ではあるが、私の調べた限りなかった。
いつも微笑んで受け流す。
それだけだ」
「左様ですわ」
あら、今度こそちゃんと調べたのね。
そうよね。
私は仮にも王族の婚約者だもの。
王家の誰かしらの監視の目はついていて然るべき。
私が噂通りの言動をしているかどうかくらいなら、少し調べようとするだけで本来なら簡単に結果は出てくるはずね。
「だが第2王子である私の婚約者として相応しくないとの考えを撤回もせん。
お前が教育という義務を放棄している現状と魔法もまともに使えん無才無能である事は変わらん。
腕の件以外の謝罪をするつもりはない」
あら、そこは納得よ。
放棄どころか隙あらば逃走しているもの。
眼差しにはまだまだ敵意があるから、思っていた悪女ではないという事実も完全には受け入れられていないのでしょうね。
「左様ですか。
ねえ、公子」
改めてお供君に声をかけ、温かく微笑む。
「卒業後に騎士として王家に仕えるならば本来の騎士が誰に仕え、恥が何たるかを己の剣にかけて知りなさいな」
孫は相変わらず私の観察を続けているけど、お供君ははっとした顔をする。
やはりはき違えていたのね。
騎士が仕えるのは王であり、王の命令なき場合は弱者を守らなければならないの。
あなたは将来王に仕え、王の命令で王子を守る事はあっても、根本的に王子に仕えるわけではないわ。
王の命令なく弱者を軽んじ、処断してもならないのよ。
稀代の悪女にしてお供君を瞬殺できる私が弱者かどうかはさて置いてね。
「お前にそのような面があったとはな……。
まさかとは思うが、無能は仮面か?
何故仮面を被る?」
あらあら?
孫は頭がお花畑なのかしら?
一瞬呆れそうになったけれど、私のデフォルト的淑女の微笑みは簡単には剥がれなくてよ。
仮面ならむしろこの微笑みではないかしら?
「ふふふ。
無能ならば蔑み、調べもせずに噂に重きを置いて貶めて良いとの愉快な人間性を垣間見る良い機会でございましてよ、殿下」
思わずムッとする孫は、けれどもう怒鳴るつもりはないみたいね。
「信用できる人間性をどなたがどの程度お持ちになっていらっしゃるかわかりますもの。
それに、殿下方がまともに私のお話に耳を傾けたのも今が初めてでございましょう?
押し問答するならば時間の無駄ですもの。
だって殿下はそんなでもこの国の権力者でしてよ?
お昼寝する時間に充てた方が私には実利がございますわ」
そう言えば、孫もお供君も鼻白んだわね。
孫ってば王族として誇るのは良いけれど、驕るのはまた別よ?
驕る平家は久しからずってあちらの世界でも有名なんだから。
「そんなでも、か。
耳が痛いな」
今度は顔を顰めてため息ね。
お顔は忙しそうだけれど、朝から散々怒鳴り散らした若さはどこに遠足に行ったのかしら?
「ふふふ、もちろん殿下方は信用致しませんわ。
ご安心して下さいな」
「安心……」
お供君、事実を突かれて傷ついた顔をするなんてまだまだね。
「蔑まれて屈辱ではないのか?
何故今になって仮面を外した?」
まあまあ、そもそもどうしてそんなに仮面扱いしたいのかしら?
もちろん無才無能のレッテルが私に都合の良いものではあるのだけれど、根本的に間違ってもいるのよね。
「そもそも誰にとっての無能でも、私は気になりませんの。
それに私は無能とも有能とも申し上げた事はありませんわよ?
好きに振る舞って楽しく生きているだけ。
ですから殿下が王子の婚約者役としての私を相応しくないと判断なさっている事にも否と唱えた事はありませんわよね?
逆に私が殿下に、殿下が私に相応しいと申し上げた事もありませんわ?
仮面など被った事もありませんし、私を何かしらの色眼鏡で見ているのは周りの方々では?」
「ふっ……そうか。
そうだったな」
孫ったら納得したようだけれど、浮かべる笑みは何だか自嘲的ね。
お前は1度もこの者ばかりか誰かを貶めた事はない。
言い返したり反撃したり、生家の権力を使ったという事実もこの短時間ではあるが、私の調べた限りなかった。
いつも微笑んで受け流す。
それだけだ」
「左様ですわ」
あら、今度こそちゃんと調べたのね。
そうよね。
私は仮にも王族の婚約者だもの。
王家の誰かしらの監視の目はついていて然るべき。
私が噂通りの言動をしているかどうかくらいなら、少し調べようとするだけで本来なら簡単に結果は出てくるはずね。
「だが第2王子である私の婚約者として相応しくないとの考えを撤回もせん。
お前が教育という義務を放棄している現状と魔法もまともに使えん無才無能である事は変わらん。
腕の件以外の謝罪をするつもりはない」
あら、そこは納得よ。
放棄どころか隙あらば逃走しているもの。
眼差しにはまだまだ敵意があるから、思っていた悪女ではないという事実も完全には受け入れられていないのでしょうね。
「左様ですか。
ねえ、公子」
改めてお供君に声をかけ、温かく微笑む。
「卒業後に騎士として王家に仕えるならば本来の騎士が誰に仕え、恥が何たるかを己の剣にかけて知りなさいな」
孫は相変わらず私の観察を続けているけど、お供君ははっとした顔をする。
やはりはき違えていたのね。
騎士が仕えるのは王であり、王の命令なき場合は弱者を守らなければならないの。
あなたは将来王に仕え、王の命令で王子を守る事はあっても、根本的に王子に仕えるわけではないわ。
王の命令なく弱者を軽んじ、処断してもならないのよ。
稀代の悪女にしてお供君を瞬殺できる私が弱者かどうかはさて置いてね。
「お前にそのような面があったとはな……。
まさかとは思うが、無能は仮面か?
何故仮面を被る?」
あらあら?
孫は頭がお花畑なのかしら?
一瞬呆れそうになったけれど、私のデフォルト的淑女の微笑みは簡単には剥がれなくてよ。
仮面ならむしろこの微笑みではないかしら?
「ふふふ。
無能ならば蔑み、調べもせずに噂に重きを置いて貶めて良いとの愉快な人間性を垣間見る良い機会でございましてよ、殿下」
思わずムッとする孫は、けれどもう怒鳴るつもりはないみたいね。
「信用できる人間性をどなたがどの程度お持ちになっていらっしゃるかわかりますもの。
それに、殿下方がまともに私のお話に耳を傾けたのも今が初めてでございましょう?
押し問答するならば時間の無駄ですもの。
だって殿下はそんなでもこの国の権力者でしてよ?
お昼寝する時間に充てた方が私には実利がございますわ」
そう言えば、孫もお供君も鼻白んだわね。
孫ってば王族として誇るのは良いけれど、驕るのはまた別よ?
驕る平家は久しからずってあちらの世界でも有名なんだから。
「そんなでも、か。
耳が痛いな」
今度は顔を顰めてため息ね。
お顔は忙しそうだけれど、朝から散々怒鳴り散らした若さはどこに遠足に行ったのかしら?
「ふふふ、もちろん殿下方は信用致しませんわ。
ご安心して下さいな」
「安心……」
お供君、事実を突かれて傷ついた顔をするなんてまだまだね。
「蔑まれて屈辱ではないのか?
何故今になって仮面を外した?」
まあまあ、そもそもどうしてそんなに仮面扱いしたいのかしら?
もちろん無才無能のレッテルが私に都合の良いものではあるのだけれど、根本的に間違ってもいるのよね。
「そもそも誰にとっての無能でも、私は気になりませんの。
それに私は無能とも有能とも申し上げた事はありませんわよ?
好きに振る舞って楽しく生きているだけ。
ですから殿下が王子の婚約者役としての私を相応しくないと判断なさっている事にも否と唱えた事はありませんわよね?
逆に私が殿下に、殿下が私に相応しいと申し上げた事もありませんわ?
仮面など被った事もありませんし、私を何かしらの色眼鏡で見ているのは周りの方々では?」
「ふっ……そうか。
そうだったな」
孫ったら納得したようだけれど、浮かべる笑みは何だか自嘲的ね。