クリスとユーリ呼びになるほど、ペンギンショップはクリスを興奮させた。買い物を一つする度に『これはどう使うのか』『これは何だ』と、目を輝かせたクリスに質問攻めにあったのだ。

「遅くなってしまったな、それよりそユーリはそんな小さなもので腹が膨れるのか?」

「大丈夫。てか、クリスも食べてみる?」

「いいのか!」

 私の手にあるものを凝視しながらクリスは大興奮だ。って、だたのカップラーメンなんだけどね。

「いいよいっぱいあるし。簡易食? 携帯食とでも言うのかな? どうなんだろ」

 私はブツブツとカップラーメンの呼称を考えながらお湯を沸かす。

「お湯を注ぐとどうなるのだ?」

「まぁ、三分待ちましょう。それより箸って知らないよね?」

 私は箸を持ってパシパシとつまむ真似をする。

「初めて見る。今手に持っていると言うことはこちらのカトラリーなのか?」

「そう。これは?」

 と、フォークを見せる。

「あぁ、それはあちらにもある」

「じゃぁこれで食べてね」

 三分経ったので蓋を開けて、クリスの前に出した。ふぉわ〜んと湯気が立ち、豚骨醤油の食欲をそそる香りが広がる。

「いただきます」

「い、いただく」

 私はお腹が空きまくっていたので、クリスへの説明より先にズズズーと麺をすすりまくる。

「んっま!」

 クリスは見よう見まねで麺をすくって食べていた。一口目。

「ん!!! ん!!!」

 と、麺を頬張ったまま目を見開き私に『おいしい』と訴えている。かわいい。

「おいしいよね〜味はちょっと濃いかもだけど。熱いから気をつけて」

 二人でラーメンをどんどんすする。うま過ぎ! 深夜のラーメンって何でこんなにうまいのか。背徳感ゆえの贅沢感? いや人類の謎だな。うんうん。

「ユーリ! これはすばらしい! どんなシェフにもこの味は出せない。しかもお湯で出来るなど… この技術が欲しいな。いや、この商品が是非とも欲しい。我が国でもさぞ人気が出るだろう」

「あはは、大袈裟。てか、簡易食だし、シェフが作った方がおいしいに決まってるじゃん。そうだ! ラーメンが気に入ったのなら、こんなんじゃなくてお店のラーメン屋に行こうか? めちゃくちゃおいしいから! ミュシュラン系の行列に並んでみちゃう?」

「これも手作りではないのか? ん?」

「麺を一から作って、スープも毎日作って、出来たてを出してくれるラーメン専門のお店があるの」

「そんな店が! 是非行きたい!」

「よし、明日はラーメンを食べに行こう! 決まりね。どうせだからおいしいとこ行こうか? 餃子もある店がいいな〜最近のラーメン屋さんは餃子を置いているところが少ないからな〜」

「うんうん。何でもいい。この味が食べられるのなら」

「豚骨系? どこあるかな〜」

 と、スマホで調べようとしたら、やっぱりクリスはスマホにも食いつく。

「その札は光るのか? しかも小さい絵がたくさんある」

「これは〜」

 と、その後はスマホでラーメン屋を探しながらクリスに操作方法などを教えた。案の定、クリスは夢中になって寝るまで触っていたけど。ふふふ。

 そして、『こちらの世界では友人でも何もしないと言う信頼の下、同じ部屋で寝ても責任取るとかないですから。大丈夫』と、何度か押し問答をしたあと、私のベット横のこたつで寝るのを躊躇っていたクリスは、疲れていたのも相まってしばらくしたら眠りについたのだった。