「そ、それより、クリス。そろそろじゃない? 着替えたほうがいいよね?」
「そうだな」
夜もふけ、クリスが帰る時間になった。私達はクリスを部屋に残し一旦外に出た。
「ゆり、どうするの? このまま本当に帰すの? てか、帰れるのかな?」
「どうするって言ったって。クリスはここの人間じゃないんだし。クリスが帰るって言ってるんだし」
「じゃなくてあんたの事。もしかしてじゃないけど好きになったんじゃない?」
「は?」
「だって… ねぇ? あの顔面とあの紳士的な態度。それにクリスさんもゆりを見る目が何となくだけど、それっぽいよ? 二人の雰囲気もピンクと言うか…」
山ちゃんとカノンはニヤニヤと私をからかう。
「そんな事あるわけないじゃん!」
「そうかな?」
「… まぁ、一日限りの彼氏? って事で、いい思い出として心に刻むわ」
「まぁ、そうか。そうなるか」
「そうだよ」
「でも、もったいないね。ゆりちゃんが楽しそうな顔、久々見たかも」
「何それ〜」
と、その時、ガチャっとクリスが玄関のドアを顔を赤くして開けた。
「… 支度ができた」
「そ、そう」
三人でひじを突きながら中に入る。あと五分もすれば予定の時間だ。
「あ! そうそう、杖忘れてるよ。あと、この雑貨もよかったら持っていって。クリスの為に買ったんだし。歯ブラシ好きでしょ?」
「あぁ…」
ギクシャクしているクリスと私はキッチンの廊下で押し黙る。
「ユーリ、本当に世話になった」
「いいって。私もそっちに召喚されなくてごめん」
「… ユーリ、私は〜」
と、クリスがつぶやいた時床が光り始めた。
「うわぁ〜」「お〜」
後ろで二人が驚きの声をあげている。私はそっと魔法陣から抜け出した。
「ユーリ、ユーリ。聞いてくれ。必ず、迎えに来る。嫌だろうか?」
「へ? 迎えにって… でも…」
「一年だ。一年待ってくれ。どうにか召喚魔法を再現してみるから。私は… ユーリが…」
と、光に包まれたクリスはそのまま消えていった。
「…」
「一年? ゆり、どうするんよ?」
「どうしよっか…」
「ゆりちゃん! 見た? 本当に消えた! すご〜い!」
と、カノンは一人カオス状態だ。山ちゃんはそっと私の肩をポンと叩いた。
「まだ一年あるし? じっくり考えな? ね?」
「… いやいや、本当に来るかどうかも分からないし… 」
私は沈んだ心を奮い立たせる。考えてもしょうがない!
「さてっと、飲みますか?」
「いいね〜」「いえ〜い」
こうして私達は間近で見た魔法話に花を咲かせた。主にはカノンだけど。興奮しすぎて例の乙女ゲームの全貌をもう一回語り始めたりして。
(月日は流れ)
私はこの二年。そう二年もクリスを待っている。って、もう一年過ぎたあたりで『来ないだろうな〜』と諦めてはいるんだけど。
「今日でもう二年ですよ、クリスさんっと」
私は例の如く、部屋で一人飲みをしている。と、その時スマホが鳴った。
「山ちゃん? どうした?」
『今日って例の日でしょ?』
「あぁ… もういいよ。約束の一年は過ぎたんだし。もう二年よ?」
『まぁそうだけど。今から行こっか?』
「いいよ。なになに〜心配してくれたの?」
『ん〜まぁね〜』
と、他わいのない話をしていたら床が光り出した。
「うそ! マジで? や、山ちゃん!」
『何? どした?』
「床が光ってる… え〜マジで?」
『ガチで? ど、どうする? え?』
「どうするって、これってクリスだよね?」
『それしかないでしょ! いいよ、飛び込んじゃいな! あとは私が何とかするから!』
「え… でも…」
『いいから! 元気にしなよ! もし帰って来れるなら帰ってくるんだよ!』
「え… うん… 山ちゃん… ありがとう」
『… 本当に元気でね』
「うん…」
こうしてスエット上下の私はスマホ片手にクリスの世界へと召喚された。
眩い光の中次にそっと目を開けると大きな広間に座っていた。
「ようこそエスヤーラ国へ。聖女様」
スマイル百点のイケメンが、床にペタンと座る私に手を差し伸べる。
「聖女?」
とりあえずキョロキョロとその場を見て回ると、スマイルイケメンのずっと後ろでクリスが罰が悪そうにこちらを見ていた。聖女って? あれ? それって話し合うとか何とか…
それより、クリスが迎えに来てくれるんじゃぁ… 何この儀式的な感じ。
「私は第一王子のアンドリュー。さぁこちらへ聖女ユーリ殿。私が責任を持っておもてなしをしますので」
王子の片手にはクリスが書いたあのノート…
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ?(怒)」
<おわり>
「そうだな」
夜もふけ、クリスが帰る時間になった。私達はクリスを部屋に残し一旦外に出た。
「ゆり、どうするの? このまま本当に帰すの? てか、帰れるのかな?」
「どうするって言ったって。クリスはここの人間じゃないんだし。クリスが帰るって言ってるんだし」
「じゃなくてあんたの事。もしかしてじゃないけど好きになったんじゃない?」
「は?」
「だって… ねぇ? あの顔面とあの紳士的な態度。それにクリスさんもゆりを見る目が何となくだけど、それっぽいよ? 二人の雰囲気もピンクと言うか…」
山ちゃんとカノンはニヤニヤと私をからかう。
「そんな事あるわけないじゃん!」
「そうかな?」
「… まぁ、一日限りの彼氏? って事で、いい思い出として心に刻むわ」
「まぁ、そうか。そうなるか」
「そうだよ」
「でも、もったいないね。ゆりちゃんが楽しそうな顔、久々見たかも」
「何それ〜」
と、その時、ガチャっとクリスが玄関のドアを顔を赤くして開けた。
「… 支度ができた」
「そ、そう」
三人でひじを突きながら中に入る。あと五分もすれば予定の時間だ。
「あ! そうそう、杖忘れてるよ。あと、この雑貨もよかったら持っていって。クリスの為に買ったんだし。歯ブラシ好きでしょ?」
「あぁ…」
ギクシャクしているクリスと私はキッチンの廊下で押し黙る。
「ユーリ、本当に世話になった」
「いいって。私もそっちに召喚されなくてごめん」
「… ユーリ、私は〜」
と、クリスがつぶやいた時床が光り始めた。
「うわぁ〜」「お〜」
後ろで二人が驚きの声をあげている。私はそっと魔法陣から抜け出した。
「ユーリ、ユーリ。聞いてくれ。必ず、迎えに来る。嫌だろうか?」
「へ? 迎えにって… でも…」
「一年だ。一年待ってくれ。どうにか召喚魔法を再現してみるから。私は… ユーリが…」
と、光に包まれたクリスはそのまま消えていった。
「…」
「一年? ゆり、どうするんよ?」
「どうしよっか…」
「ゆりちゃん! 見た? 本当に消えた! すご〜い!」
と、カノンは一人カオス状態だ。山ちゃんはそっと私の肩をポンと叩いた。
「まだ一年あるし? じっくり考えな? ね?」
「… いやいや、本当に来るかどうかも分からないし… 」
私は沈んだ心を奮い立たせる。考えてもしょうがない!
「さてっと、飲みますか?」
「いいね〜」「いえ〜い」
こうして私達は間近で見た魔法話に花を咲かせた。主にはカノンだけど。興奮しすぎて例の乙女ゲームの全貌をもう一回語り始めたりして。
(月日は流れ)
私はこの二年。そう二年もクリスを待っている。って、もう一年過ぎたあたりで『来ないだろうな〜』と諦めてはいるんだけど。
「今日でもう二年ですよ、クリスさんっと」
私は例の如く、部屋で一人飲みをしている。と、その時スマホが鳴った。
「山ちゃん? どうした?」
『今日って例の日でしょ?』
「あぁ… もういいよ。約束の一年は過ぎたんだし。もう二年よ?」
『まぁそうだけど。今から行こっか?』
「いいよ。なになに〜心配してくれたの?」
『ん〜まぁね〜』
と、他わいのない話をしていたら床が光り出した。
「うそ! マジで? や、山ちゃん!」
『何? どした?』
「床が光ってる… え〜マジで?」
『ガチで? ど、どうする? え?』
「どうするって、これってクリスだよね?」
『それしかないでしょ! いいよ、飛び込んじゃいな! あとは私が何とかするから!』
「え… でも…」
『いいから! 元気にしなよ! もし帰って来れるなら帰ってくるんだよ!』
「え… うん… 山ちゃん… ありがとう」
『… 本当に元気でね』
「うん…」
こうしてスエット上下の私はスマホ片手にクリスの世界へと召喚された。
眩い光の中次にそっと目を開けると大きな広間に座っていた。
「ようこそエスヤーラ国へ。聖女様」
スマイル百点のイケメンが、床にペタンと座る私に手を差し伸べる。
「聖女?」
とりあえずキョロキョロとその場を見て回ると、スマイルイケメンのずっと後ろでクリスが罰が悪そうにこちらを見ていた。聖女って? あれ? それって話し合うとか何とか…
それより、クリスが迎えに来てくれるんじゃぁ… 何この儀式的な感じ。
「私は第一王子のアンドリュー。さぁこちらへ聖女ユーリ殿。私が責任を持っておもてなしをしますので」
王子の片手にはクリスが書いたあのノート…
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ?(怒)」
<おわり>