翌日。学校に行くと、樋渡さんはいつもより早く登校していた。

「あ⋯樋渡さん⋯」

「菜乃花くん⋯」

「昨日⋯君のお姉ちゃんに会ったんだけど⋯」

そう言うと、彼女は急に顔色を変えて驚いたように叫んだ。

「お姉ちゃんに⋯!?」

「え⋯うん。昨日あったよ⋯河川敷で⋯」

「嘘⋯。だってお姉ちゃんは⋯」

泣きそうな顔でこちらを見つめる。まだ時間帯が早いとは言えど教室の中だったので、大事になってはダメだと思った僕は、彼女を人気のない校舎裏へと呼び寄せた。

「ここで⋯話そう⋯」

「うん⋯」

「それで⋯続きは?」

彼女は呼吸を整えて口を開く。

「お姉ちゃんは3年前に亡くなったの⋯」

衝撃が走った。昨日触れて、話して、笑いあった彼女が故人だったなんて。信じられなかった。

「⋯嘘だ、昨日⋯。だって昨日確かに河川敷で話を⋯」

「でも⋯本当に亡くなってるの」

言葉を失った。僕は確かに蒼と話をしたし、肌が触れ合った感覚もしっかりと覚えている。僕が貸したハンカチも連絡先も⋯。

連絡先⋯。

僕は急いでスマホを取りだし、昨日交換した連絡先を探す。
でも、いくら探しても、蒼で登録したはずの連絡先は見つからなかった。

「だけど、昨日確かにハンカチを⋯」

急いで教室に戻り、机の中を見る。ハンカチはない。
カバンの中を探しても、制服のポケットの中を探しても、ハンカチは見つからなかった。

「ちょっと⋯なんで急に⋯」

慌てて僕の後を追いかけてきた樋渡さんは少し呼吸を荒くしながら聞く。

「僕のハンカチ⋯」

「ハンカチ?菜乃花くんの⋯?」

「昨日君のお姉ちゃんに⋯ハンカチを貸したんだ」

僕は荷物をまとめて教室を出ようとする。

「ち、ちょっと⋯帰るの?」

「うん、僕にとっては一大事だから⋯」

そう言って教室を出ようとドアの付近まで歩く。すると、彼女は僕の服の裾を引っ張ってこういった。

「ちょっと⋯私も⋯行く」

「え⋯でも、君は⋯」

「私も、関係あるから⋯」

そう言って彼女も荷物をまとめて僕に着いてきた。

学校のもんを飛び越えて、急いであの場所へ向かう。

昨日蒼と逢った場所へ―― 。