「来⋯なんで泣いてるの?」

目を覚ました母さんがゆっくりと体を起こしながら僕の方を見る。

「母さん⋯やっと⋯⋯。ごめん、ごめんなさい⋯」

「なんで泣いてるのか分からないけど、母さんは怒ってないよ⋯」

知ってる。けど、どうしても昔の母さんに戻ったみたいで喜びが溢れ出て、涙をこらえきれず、泣き崩れてしまった。
母さんは心配そうにこちらを見つめている。

「母さん⋯いつもありがとう⋯」

溢れる涙を拭いながら精一杯の感謝の気持ちを簡潔に伝える。母さんは微笑みながらこう言った。

「当たり前じゃない」

一息ついた後、母さんは急に話し出した。

「夢を見たの。貴方と、あの人の夢。今更だけど、あの人だけが悪いんじゃなかった。私もしっかり反論していれば良かったのよね⋯。今まで気づけなかった私が馬鹿みたい」

「そんなこと⋯ないよ⋯」

しっかり否定はできなかった。
実際、反論していればよかった場面なんて幾つもある。
だから言葉を少し濁してしまった。でも、母さんはそんなこと気にせず、僕の頭を撫でてこういう。

「ねぇ、来。もう一度やり直せるかな⋯。来と一緒に幸せになれるかな⋯」

優しく微笑む母さんの顔は懐かしく、僕の心を安心でいっぱいにさせた。

「きっとなれるよ⋯」

「そう⋯母さん頑張るね⋯」

そう言って外を見つめる母さんの目は、しっかりと未来を見据えていた。