「僕も、あの星みたいに綺麗になれる?」

「うん、(らい)ならきっとなれるよ」

思い出すなんて⋯らしくないな。

《来》とは僕の名前だ。

最後に母さんに名前を呼ばれたのは3年前。古びた思い出はもう鮮明に蘇ることはなく、映像は飛び飛びで、断片的にしか思い出すことが出来なくなっていた。

懐かしい会話と共に思い出すのは、あの頃の母さんの顔。星々が綺麗に輝く中で、1番美しく光り輝いていた。

「だから⋯思い出すべきじゃ⋯ないんだって⋯⋯」

ひたすら泣いた。思い出に蓋をして、厳重に鎖でまきつけながら。二度と思い出さないように、今までの感情を全て出し切るように、明日からまた普通の生活に戻れることを願って涙を零した。
数十分泣いて、少し落ち着いてきた頃。月は煌めき、流れる川は月の光に照らされて綺麗な星々を宿していた。

涙を拭い、腫れた目を擦りながら月を眺める。
綺麗だった。月は自分で光を発さない。太陽に照らされて美しく輝くのだ。それが不思議と僕の心の中で響いて、夜中になってもなかなか家に帰れる気がしなかった。
だから、明け方までずっとその場所から離れられなかった。