「クロちゃん、お花ちゃん、心配させてごめんなさい。これからこの森を解放して、ギルドに事の顛末を伝えてくるわ。あの砂まみれの三人が突然転移して驚いているでしょうし」
「キュイキュイ」
「ふふふ、もちろんそのつもりよ、クロちゃん。お金で仲間殺しの依頼を請け負った証拠もついでに突きつけて、冒険者登録を永遠に剥奪してやるんだから。馬鹿な王太子とあの公爵達も合わせて社会的な信用を失墜すること間違いなしね」
依頼人の彼らは、王族や貴族としての今の地位も失うでしょうね。
王太子なんてダーリン(仮)を自分の駒として使おうとして余裕のお断り食らった挙げ句、剣聖なんて人気が出た事への逆恨みが今回のふざけた依頼の理由なの。すこぶる自業自得よ。
冒険者への違法な、それもパーティーメンバーの殺害依頼を持ちかけるのは、あらゆる国で御法度なの。特に身分が上の者であればあるほど、厳しい目があらゆる所から向けられちゃう。
下手をすれば暗殺系闇ギルドに自分達が殺される事だってある。ギルドと名の付く全ての各所にマークされる事になるから、ざまあみろね。
ふふふ、今後が楽しみ。もちろんそうなるよう、もう暫く私は暗躍するわ。その為の悪女の道ですもの!
まずは長らく死の森と呼ばれていたこの場所は、解放してギルドの預かりにするつもり。
そうすれば災害級の実力者が魔竜を討伐し、浄化もした土地になる。国同士の争いが牽制され、話し合いの場の橋渡しをギルドが担うようになるわ。
ギルドもお金と栄誉が手に入ってウハウハ、私も恩が売れて発言権を持つから悪女の道を極められるってものよ。
それに……前世の私を冤罪にかけ、殺したこの土地とも綺麗に縁が切れて気持ちも軽くなる。
「クロちゃん、お花ちゃん。S級冒険者として冒険者カインの後見人登録もするから、少し時間はかかると思うの」
お花ちゃんおクロちゃんに静かに語りかける。
S級冒険者が後見した冒険者には庇護がつく。だから今後はダーリン(仮)を私怨で害する事は何者であっても許されなくなるわ。仮にもS級の実力者の目を盗めるかどうかも危しいし、仮にばれればその人間が所属する国の信用も揺らぐ。だって冒険者ギルドの恩恵が受けられなくなるもの。
もちろん私はこれまで同様監視の目を弛めるつもりもないけれど。
後はどう生きるのかは、貴方次第よ。ダーリン(仮)……いえ、カイン。
「貴方達はどうする?」
「「キュイキュイキュイ!」」
紅白のミニサイズの尻尾をフリフリしながら、二頭のミニ竜達が可愛らしく鳴いて想いを伝えてくれた。
はぁ~、うちの子達の可愛いが炸裂しているわ! ついてきてくれるって!
「なら、行きましょう! これからも一緒に旅を続けましょうね!」
もう嫌われてしまっただろうカインを想うと、胸が痛む。けれど、すぐに慣れるわ。いつか新しい恋ができるといいわね。
ーーーー数ヶ月後。
「くぅ! 久々に飲むお酒は最高ね!」
「姉ちゃん! 昼間っから、いい飲みっぷりじゃねえか!」
「あら、おじさん。お褒めにあずかり嬉しいわ! ちょっと面倒な手続きが終わったから、今日はそのお祝いなのよ!」
少し前に冒険者ギルド本部から使い魔が来て、色々と肩の荷が降りるようなお知らせを伝えてくれた。
ミニ竜ちゃん達は私の影と亜空間を繋げて、仲良くお休み中よ。うちの子達ってば、器用な事するわねえ。
「そうかい! よく知らねえが、めでたいのはいい! だけどこの国出る時にゃ気をつけろよ」
楽しそうに声をかけてきた気の良さげなおじさんが、ふと声を落とす。
「あら、何かあったの?」
「ほら、何ヵ月か前に、ある国で王太子が廃嫡されて国外追放になった話知らねえか? まあまあデカい事件として明るみになったやつ! ほら、その元王太子と仲の良かった元公爵兄弟も、一枚噛んで清廉潔白な剣聖を嵌めようとしたってやつだよ!」
「そういえば、そんな噂があったわねえ。なになに、それがどうかしたの?」
私も少し声のトーンを落として、おじさんに合わせる。
「先週だったかな。この近くの国境の山で、そいつらの遺体が見つかったんだよ。魔獣に食い散らかされたような、原形が留めてねえくらい無惨なもんだったらしいぜ」
「そうなの?! やだ、怖いわあ」
「だろう? まあ剣聖の仲間だった奴らを汚ねえ金で買収して、魔竜の仕業に見せかけて殺せって依頼した連中だ。お似合いの死に様っちゃ死に様だがよ。にしても剣聖はたまたま鮮血の魔女なんていう、眉唾物のS級冒険者が居合わせて良かったよな!」
あら、私ってば眉唾物なのね。
「姉ちゃん見た感じ、旅人だろ? あそこら辺は危ねえから、違う道を通んな」
「まあ、ありがとう。そうするわ。店員さ〜ん! この人にビールとおつまみをお願い! 私の奢りよ」
「っかあ! 気の利いた姉ちゃんだ! ありがとよ!」
言うだけ言って、おじさんは上機嫌でお酒とおつまみを受け取ってから、自分のテーブルに戻った。
それを横目に、ビールを一口飲んでほうっと息を吐く。
さっそく闇ギルドが動いたのかしら? もちろん私は犯人でもなければ、依頼もしていないわ。
無惨な遺体、ねえ。いつかの夢で見た三体の遺体と似た状態だったりして。因果応報ってこういう事なんでしょうね。
あのポンコツ冒険者三人も、各所で暴漢に襲われて亡くなったらしいわ。同じ冒険者の私刑リンチじゃないかって噂よ。
もちろんソレも私じゃない。殺すならあの時、殺しているもの。
許せない人間達は破滅の道を進むしかないのだから、黙して高みの見物をするのが真の悪女道というものよ。どうせもう、カインに嫌われているのでしょうから開き直ってやるわ。
あれから剣聖は、どこかの辺境の地を出た後に消息を消したみたい。後見人の私にも情報が流れて来ないから、きっと私は嫌われて……。
グビッと残りのお酒を飲み干す。
やあね、しみじみしちゃった。さあさ、気ままな冒険者の旅を続けましょう!
「キュイキュイ」
「ふふふ、もちろんそのつもりよ、クロちゃん。お金で仲間殺しの依頼を請け負った証拠もついでに突きつけて、冒険者登録を永遠に剥奪してやるんだから。馬鹿な王太子とあの公爵達も合わせて社会的な信用を失墜すること間違いなしね」
依頼人の彼らは、王族や貴族としての今の地位も失うでしょうね。
王太子なんてダーリン(仮)を自分の駒として使おうとして余裕のお断り食らった挙げ句、剣聖なんて人気が出た事への逆恨みが今回のふざけた依頼の理由なの。すこぶる自業自得よ。
冒険者への違法な、それもパーティーメンバーの殺害依頼を持ちかけるのは、あらゆる国で御法度なの。特に身分が上の者であればあるほど、厳しい目があらゆる所から向けられちゃう。
下手をすれば暗殺系闇ギルドに自分達が殺される事だってある。ギルドと名の付く全ての各所にマークされる事になるから、ざまあみろね。
ふふふ、今後が楽しみ。もちろんそうなるよう、もう暫く私は暗躍するわ。その為の悪女の道ですもの!
まずは長らく死の森と呼ばれていたこの場所は、解放してギルドの預かりにするつもり。
そうすれば災害級の実力者が魔竜を討伐し、浄化もした土地になる。国同士の争いが牽制され、話し合いの場の橋渡しをギルドが担うようになるわ。
ギルドもお金と栄誉が手に入ってウハウハ、私も恩が売れて発言権を持つから悪女の道を極められるってものよ。
それに……前世の私を冤罪にかけ、殺したこの土地とも綺麗に縁が切れて気持ちも軽くなる。
「クロちゃん、お花ちゃん。S級冒険者として冒険者カインの後見人登録もするから、少し時間はかかると思うの」
お花ちゃんおクロちゃんに静かに語りかける。
S級冒険者が後見した冒険者には庇護がつく。だから今後はダーリン(仮)を私怨で害する事は何者であっても許されなくなるわ。仮にもS級の実力者の目を盗めるかどうかも危しいし、仮にばれればその人間が所属する国の信用も揺らぐ。だって冒険者ギルドの恩恵が受けられなくなるもの。
もちろん私はこれまで同様監視の目を弛めるつもりもないけれど。
後はどう生きるのかは、貴方次第よ。ダーリン(仮)……いえ、カイン。
「貴方達はどうする?」
「「キュイキュイキュイ!」」
紅白のミニサイズの尻尾をフリフリしながら、二頭のミニ竜達が可愛らしく鳴いて想いを伝えてくれた。
はぁ~、うちの子達の可愛いが炸裂しているわ! ついてきてくれるって!
「なら、行きましょう! これからも一緒に旅を続けましょうね!」
もう嫌われてしまっただろうカインを想うと、胸が痛む。けれど、すぐに慣れるわ。いつか新しい恋ができるといいわね。
ーーーー数ヶ月後。
「くぅ! 久々に飲むお酒は最高ね!」
「姉ちゃん! 昼間っから、いい飲みっぷりじゃねえか!」
「あら、おじさん。お褒めにあずかり嬉しいわ! ちょっと面倒な手続きが終わったから、今日はそのお祝いなのよ!」
少し前に冒険者ギルド本部から使い魔が来て、色々と肩の荷が降りるようなお知らせを伝えてくれた。
ミニ竜ちゃん達は私の影と亜空間を繋げて、仲良くお休み中よ。うちの子達ってば、器用な事するわねえ。
「そうかい! よく知らねえが、めでたいのはいい! だけどこの国出る時にゃ気をつけろよ」
楽しそうに声をかけてきた気の良さげなおじさんが、ふと声を落とす。
「あら、何かあったの?」
「ほら、何ヵ月か前に、ある国で王太子が廃嫡されて国外追放になった話知らねえか? まあまあデカい事件として明るみになったやつ! ほら、その元王太子と仲の良かった元公爵兄弟も、一枚噛んで清廉潔白な剣聖を嵌めようとしたってやつだよ!」
「そういえば、そんな噂があったわねえ。なになに、それがどうかしたの?」
私も少し声のトーンを落として、おじさんに合わせる。
「先週だったかな。この近くの国境の山で、そいつらの遺体が見つかったんだよ。魔獣に食い散らかされたような、原形が留めてねえくらい無惨なもんだったらしいぜ」
「そうなの?! やだ、怖いわあ」
「だろう? まあ剣聖の仲間だった奴らを汚ねえ金で買収して、魔竜の仕業に見せかけて殺せって依頼した連中だ。お似合いの死に様っちゃ死に様だがよ。にしても剣聖はたまたま鮮血の魔女なんていう、眉唾物のS級冒険者が居合わせて良かったよな!」
あら、私ってば眉唾物なのね。
「姉ちゃん見た感じ、旅人だろ? あそこら辺は危ねえから、違う道を通んな」
「まあ、ありがとう。そうするわ。店員さ〜ん! この人にビールとおつまみをお願い! 私の奢りよ」
「っかあ! 気の利いた姉ちゃんだ! ありがとよ!」
言うだけ言って、おじさんは上機嫌でお酒とおつまみを受け取ってから、自分のテーブルに戻った。
それを横目に、ビールを一口飲んでほうっと息を吐く。
さっそく闇ギルドが動いたのかしら? もちろん私は犯人でもなければ、依頼もしていないわ。
無惨な遺体、ねえ。いつかの夢で見た三体の遺体と似た状態だったりして。因果応報ってこういう事なんでしょうね。
あのポンコツ冒険者三人も、各所で暴漢に襲われて亡くなったらしいわ。同じ冒険者の私刑リンチじゃないかって噂よ。
もちろんソレも私じゃない。殺すならあの時、殺しているもの。
許せない人間達は破滅の道を進むしかないのだから、黙して高みの見物をするのが真の悪女道というものよ。どうせもう、カインに嫌われているのでしょうから開き直ってやるわ。
あれから剣聖は、どこかの辺境の地を出た後に消息を消したみたい。後見人の私にも情報が流れて来ないから、きっと私は嫌われて……。
グビッと残りのお酒を飲み干す。
やあね、しみじみしちゃった。さあさ、気ままな冒険者の旅を続けましょう!