「どうしたのかな。なんだかすごく眠いの……」
お盆が迫るにつれて、チヒロは頻繁に眠気をもよおすようになった。寝起きも悪くなっている。
「あれじゃないかな。ほら夏バテみたいなもの。気温や日光の熱をじかに感じなくても、見るからに暑そうってイメージで身体が疲れるんじゃないの」
僕はなんてことないそぶりで言ったけど、内心は違った。
根拠などまるでないが、これまでの平穏な日々がくつがえされるような、不吉な予感にまといつかれていた。
仏教のすべてを信じているわけじゃない。それでもチヒロの眠気は、“お盆”とつながっている悪い兆しのような気がしてならなかった。
全国的にお盆の入りとなる13日がやってきた。
その日のバイトシフトは休みだったので、じぶんの部屋でチヒロとまったり過ごした。
日中、チヒロは眠らないようにがんばっていたけど、ノートPCでミステリーものの映画を観ていたら、こっくりこっくりしはじめた。
物音を立ててもぴくりとも反応しないので、もしかしたらチヒロはこのまま永遠に目を覚まさないんじゃないか……、と悪い想像にからめとられ、心臓が何度もキューッと縮んだ。
14、15、16日はバイトへ行くのが心配だった。
とくにお盆の送り日──この世にもどっていた先祖や死者の霊があの世に帰っていく──とされる16日は、チヒロから片ときも目を離したくなかった。だから、