吉川さんが上目づかいに僕を見やった。その頬がうっすら赤く色づいていく。そして、

「ありがとうございます」

 と深々と頭を下げた。

「こんなわたしのことを好きになってくれて。それに、おうちにまで招いてくれて。生涯(しょうがい)で一番の思い出になります。あ、これってまさしく冥途(めいど)土産(みやげ)ですよね」

 ウケを(ねら)ったわけじゃない吉川さんの天然発言がおかしくて、僕の頬がひとりでにゆるんだ。

 右手で〈ナイス〉のかたちをつくり、励ますように吉川さんに言う。

「“おもしろいこと”、ちゃんと言えるじゃん」