「デュカルト様。ただいま戻りました」
「あ、フレドリクさん。おかえりなさい。どうでしたか?」
日々、だんだんとロックレイは肌寒くなってきた。
雪が積もれば山道は閉ざされる。下の町から食料を仕入れるってこともできないから、自給自足するしかない。
で、雪が積もれば狩りもできなくなるし、今のうちにとドワーフさんたちとフレドリクさんが今朝から出かけていた。
「エレファントボアとジャイアントキラーラビット、ファンググリズリーと、あと鹿やヤギを仕留めました」
「おぉ、大猟じゃないですか。獲物はどこに?」
「中央噴水のとことで今、町の方々が解体作業を行っております」
「そうですか。僕も見て来よう。あ、ルキアナさんも行きますか?」
「ん。ファンググリズリーの肝は熱冷ましの薬になる。ドワーフどもに焼かれる前に、奪い取るのじゃ!」
奪い取るって……。
焼かれる前にってことは、酒のつまみになるってことかな。
冬になれば風邪を引いて熱を出す人もいるかもしれない。熱冷ましは欲しいところだ。
「なら急ぎましょう」
「うむ!」
屋敷を出て小走りに町の中央へ向かう。
駆け抜ける道に並ぶ建物のほとんどが空き家だ。
いつかこの空き家にも、人が暮らす日がくるのかな。
「ドワーフどもが来てるじゃない。肝! 肝は渡さないんだからっ」
「あっ、ルキアナさん!?」
中央の噴水広場――といっても水は出てないけど――そこにはルキアナさんが言う様に、ドワーフ族の方もたくさん来ていた。
女性のドワーフさんもいるみたいだ。解体の手伝いかな?
でも、あの人数はさすがにおおす……ん?
あ、あれ、なんだろう。あの黒い、山のような塊。
毛? 毛皮?
エレファントボアって、どんなモンスター?
エレフェントは象で、ボアはイノシシだよね。象みたいに大きなイノシシ?
そ、それなら納得できる。
うん。いやでも、あれ一頭?
「フ、フレドリクさん。お伺いしますが、何頭、獲ってきたんですか?」
「はい。エレフェントボア四頭、ジャイアントキラーラビット九頭、ファンググリズリー四頭です。鹿とヤギは……お恥ずかしながら、一頭ずつでして」
「いやいやいや、多いですって!」
どおりであの毛の山なわけだ。
『あれだけあればひと冬越せるであろうな』
「ですね」
「ファングの解体は私がするのじゃ!」
ルキアナさんが嬉々として輪の中に入っていく。
解体の手伝い、僕もできればいいのだけれど。
前世でも多少は料理をしたことがあるけど、魚をさばいたこともないからなぁ。
こっちの世界では、魔導レンジが切るのもやってくれるし。
解体、レンジでできないかな?
と思って魔導レンジを出してみたけど、そもそも獲物が大きくてレンジに入らない。
解体したものじゃないと入らないなら、まったくの無意味だ。
「坊や、レンチンするの?」
「え、えっと……」
「そうだ。レンジで血抜きや乾燥とかってできない?」
「あ、できますよ。やりましょうか?」
「お願い。坊やがいたら時間がかかる作業も一瞬ね」
時間がかかる作業……そうだ、乾燥肉や燻製肉も、魔導レンジを使えば一瞬で作れるんだ。
量が入らないから何度もやらなきゃいけないけど、普通に作るよりは早く終わる。
「肉の加工は僕がやります。すみませんが、レンジに入るサイズにカットしていただけますか?」
「お、そうか。坊ちゃんに任せれば一瞬だったな」
「おいかーちゃん。燻製用のチップを用意してくれ」
「塩も頼むわ」
「「あいよー」」
ファンググリズリーの肝を四つレンチンしたあとは、みんなが切り分けてくれた肉をどんどんレンチン。
燻製も干し肉も塩漬け肉も、じゃんじゃん作った。
よかった。僕もみなさんのお手伝いができて。
『しかし少年よ。あれだけスキルを使っておいて、まったく魔力切れを起こすことはないのか?』
「はい。魔力量だけは無駄に多いので。僕の魔力量は、たとえば魔法が使えるとした場合、その効果に直結する魔力じゃなく、何回魔法を使えるかっていう方の魔力のようなんです」
『うむ。そうであるな。吾輩にもそう見える。しかしそれだけではないようだ』
「え、そうなんですか?」
肉の加工作業を終え、夜にはそのままみなさんとお肉パーティーを楽しんで帰宅。
ベッドで天井を見つめながら、枕元に立つヴァルゼさんと少し話をした。
『少年がスキルを使った際、魔力の減少が感じられる。だが次の瞬間には、減少した分がすでに補充されておるのだ』
「消費した魔力が、すぐに戻ってるんですか?」
『その通りだ』
それは知らなかった。
無限魔力という加護を授かっているけど、無限ってそういう意味なのかな。
無限に湧き出る魔力とか、無限にスキルを使える魔力とか、そういう。
魔法が使えないとわかった時は、なんて無駄な加護を授かったものだろうと思っていたけど、今日みたいに繰り返し何十回、何百回とレンチンするときには、加護を授かってよかったなって思えるようになった。
僕にできることなんて少ないけど、少しでも役に立てるなら何百回でも、何千回でもスキルを使おう。
それに、僕の魔導レンジは料理以外のものもレンチンできるってわかったし。
まずは――
「ヴァルゼさん。最低限の鉱石が採掘されたら、融雪装置用の魔導具開発をお願いします」
『ふっふっふ。任せておきたまえ。すでに構想はできておる』
雪が降り出す前に、魔導鉱石が採掘せれるといいんだけどなぁ。
「あ、フレドリクさん。おかえりなさい。どうでしたか?」
日々、だんだんとロックレイは肌寒くなってきた。
雪が積もれば山道は閉ざされる。下の町から食料を仕入れるってこともできないから、自給自足するしかない。
で、雪が積もれば狩りもできなくなるし、今のうちにとドワーフさんたちとフレドリクさんが今朝から出かけていた。
「エレファントボアとジャイアントキラーラビット、ファンググリズリーと、あと鹿やヤギを仕留めました」
「おぉ、大猟じゃないですか。獲物はどこに?」
「中央噴水のとことで今、町の方々が解体作業を行っております」
「そうですか。僕も見て来よう。あ、ルキアナさんも行きますか?」
「ん。ファンググリズリーの肝は熱冷ましの薬になる。ドワーフどもに焼かれる前に、奪い取るのじゃ!」
奪い取るって……。
焼かれる前にってことは、酒のつまみになるってことかな。
冬になれば風邪を引いて熱を出す人もいるかもしれない。熱冷ましは欲しいところだ。
「なら急ぎましょう」
「うむ!」
屋敷を出て小走りに町の中央へ向かう。
駆け抜ける道に並ぶ建物のほとんどが空き家だ。
いつかこの空き家にも、人が暮らす日がくるのかな。
「ドワーフどもが来てるじゃない。肝! 肝は渡さないんだからっ」
「あっ、ルキアナさん!?」
中央の噴水広場――といっても水は出てないけど――そこにはルキアナさんが言う様に、ドワーフ族の方もたくさん来ていた。
女性のドワーフさんもいるみたいだ。解体の手伝いかな?
でも、あの人数はさすがにおおす……ん?
あ、あれ、なんだろう。あの黒い、山のような塊。
毛? 毛皮?
エレファントボアって、どんなモンスター?
エレフェントは象で、ボアはイノシシだよね。象みたいに大きなイノシシ?
そ、それなら納得できる。
うん。いやでも、あれ一頭?
「フ、フレドリクさん。お伺いしますが、何頭、獲ってきたんですか?」
「はい。エレフェントボア四頭、ジャイアントキラーラビット九頭、ファンググリズリー四頭です。鹿とヤギは……お恥ずかしながら、一頭ずつでして」
「いやいやいや、多いですって!」
どおりであの毛の山なわけだ。
『あれだけあればひと冬越せるであろうな』
「ですね」
「ファングの解体は私がするのじゃ!」
ルキアナさんが嬉々として輪の中に入っていく。
解体の手伝い、僕もできればいいのだけれど。
前世でも多少は料理をしたことがあるけど、魚をさばいたこともないからなぁ。
こっちの世界では、魔導レンジが切るのもやってくれるし。
解体、レンジでできないかな?
と思って魔導レンジを出してみたけど、そもそも獲物が大きくてレンジに入らない。
解体したものじゃないと入らないなら、まったくの無意味だ。
「坊や、レンチンするの?」
「え、えっと……」
「そうだ。レンジで血抜きや乾燥とかってできない?」
「あ、できますよ。やりましょうか?」
「お願い。坊やがいたら時間がかかる作業も一瞬ね」
時間がかかる作業……そうだ、乾燥肉や燻製肉も、魔導レンジを使えば一瞬で作れるんだ。
量が入らないから何度もやらなきゃいけないけど、普通に作るよりは早く終わる。
「肉の加工は僕がやります。すみませんが、レンジに入るサイズにカットしていただけますか?」
「お、そうか。坊ちゃんに任せれば一瞬だったな」
「おいかーちゃん。燻製用のチップを用意してくれ」
「塩も頼むわ」
「「あいよー」」
ファンググリズリーの肝を四つレンチンしたあとは、みんなが切り分けてくれた肉をどんどんレンチン。
燻製も干し肉も塩漬け肉も、じゃんじゃん作った。
よかった。僕もみなさんのお手伝いができて。
『しかし少年よ。あれだけスキルを使っておいて、まったく魔力切れを起こすことはないのか?』
「はい。魔力量だけは無駄に多いので。僕の魔力量は、たとえば魔法が使えるとした場合、その効果に直結する魔力じゃなく、何回魔法を使えるかっていう方の魔力のようなんです」
『うむ。そうであるな。吾輩にもそう見える。しかしそれだけではないようだ』
「え、そうなんですか?」
肉の加工作業を終え、夜にはそのままみなさんとお肉パーティーを楽しんで帰宅。
ベッドで天井を見つめながら、枕元に立つヴァルゼさんと少し話をした。
『少年がスキルを使った際、魔力の減少が感じられる。だが次の瞬間には、減少した分がすでに補充されておるのだ』
「消費した魔力が、すぐに戻ってるんですか?」
『その通りだ』
それは知らなかった。
無限魔力という加護を授かっているけど、無限ってそういう意味なのかな。
無限に湧き出る魔力とか、無限にスキルを使える魔力とか、そういう。
魔法が使えないとわかった時は、なんて無駄な加護を授かったものだろうと思っていたけど、今日みたいに繰り返し何十回、何百回とレンチンするときには、加護を授かってよかったなって思えるようになった。
僕にできることなんて少ないけど、少しでも役に立てるなら何百回でも、何千回でもスキルを使おう。
それに、僕の魔導レンジは料理以外のものもレンチンできるってわかったし。
まずは――
「ヴァルゼさん。最低限の鉱石が採掘されたら、融雪装置用の魔導具開発をお願いします」
『ふっふっふ。任せておきたまえ。すでに構想はできておる』
雪が降り出す前に、魔導鉱石が採掘せれるといいんだけどなぁ。