ゼザーク子爵の爵位、および個人資産は全没収。
加えて子爵からの賄賂を受け取ったとし、ガルバンダス侯爵家には金貨一五〇枚の賠償命令が下された。
実際ガルバンダス侯爵が加担しているのだろうけど、それを問えるだけの証拠がない。
悔しくはあるけど、そこはまだ仕方ないか。
「ところでデュカルトよ」
「は、はい、陛下」
「主は鑑定のスキルを持っておったな?」
「はい。そのスキルを使って、魔導具にとって隠された帳簿と目録を見つけることができました」
「そうか。では一つ頼まれてくれぬの?」
陛下から僕に頼み?
「も、もちろんですっ」
僕はそう答えてから、王子殿下に連れられて大きな部屋へと入った。
派手さはないけど、全ての家具が調和された綺麗な部屋だ。きっと高級な家具なんだろう。
奥にはベッドルームもあるし、客室なのかな?
「ここはわたしの寝室なんだ」
「えぇ! で、殿下の寝室ですか!?」
え、僕、寝室に連れて来られてこれからどうなっちゃうの?
え?
ドキドキしていると、殿下が近づいて来て……ち、近い。
イケメンの顔が近い!
僕のん気ですから!
「部屋を鑑定してくれないか?」
「え?」
僕の耳元でぼそりを聞こえた殿下の声。
部屋を鑑定って……つまり魔導具がどこかにあるかもしれないってこと?
「わ、わかりました」
「あぁ、ちなみに任意の物もあるからね」
「任意、ですか?」
任意の意味はすぐに分かった。
窓ガラスには簡単に割れないよう、コーティングの魔導具が設置され、ベッドには防御結界を張る魔導具が。
こうした警備という意味で設置された魔導具ではなく、誰かが何かの目的で置いたかもしれない魔導具が有無を調べてくれってことだろう。
「これも魔導具ですね。殿下?」
「……それは王室で用意したものではないなぁ。鑑定内容は?」
「え? あ、はい。魔導具が拾った音を、対応するもう一つの魔導具から聞くことができ、る……盗聴器だ!」
「なるほど。室内で交わされる会話を盗み聞きするものか。対応する魔導具があるってことだな。ではその魔導具から流れる魔力を辿れば――」
犯人を見つけることができる――ん? なんか焦げくさ……
「わっ!」
「デュカルト!」
突然僕が手にしていた魔導具が爆発した。
まぁ小さなものだったし、ちょっと手を切った程度だけど。
「誰かっ。すぐにミューラ神官をっ」
「殿下、何かあったのですか!?」
「デュカルトが怪我をしたのだ。すぐにミューラを呼べっ」
「承知いたしました」
「大丈夫です殿下。少し血は出ていますが、傷は浅いので。神官様の手を煩わせる程度ではありません」
たぶん。
まぁ痛いものは痛いけれど。
「そうはいかん。君にもしものことがあったら、侯爵に恨まれるのはわたしなのだからね」
「はは、はははぁ」
「迂闊だった。盗聴用であれば、見つけた時点で奴にもバレていただろうに。すぐに手放すよう言わなかったわたしのせいだ」
「そんなことありません殿下っ。そもそも鑑定して対応するもう一つの魔導具があるとわかった時に、持っていた僕が悪いのですから」
「いやわたしが」
「いえ僕です!」
と言い争っている間に、
「どっちが悪いとかどうでもいいので、傷を見せてください」
っと、真っ白な法衣を着た女の人がやって来た。
「ミューラ! 急いで治癒を」
「はいはい。ですから邪魔です、おどきください」
う、うわぁ。王子に向かって邪魔って……凄い、この神官さん。
「痛かったでしょう。すぐに治癒しますから。"この者が受けし傷を、癒したまえ――ヒール"」
わぁ、凄く温かい光だ。
侯爵家にもお抱えの神官さんがいて、その人の光も温かかった。
「父上が言っていました。治癒の光が温かいのは、その人が優しいからだって。業務的に治癒する人の場合、光は温かくないそうです」
「そ、そうですか」
「あなたの光は、凄く温かいです」
「ほぉ、ミューラよかったな。お優しい神官様だってさ。わたしにはちっとも優しくないのになぁ」
「うるさいです殿下。優しくする価値が殿下にはないだけです」
「ほらなぁ、デュカルト。その光が温かく感じたのは、気のせいだぞぉ」
うん。なんとなく僕わかっちゃった。
この二人、本当はすっごく仲良しなんだね。
もしかして恋人?
身分違いの恋って、難しそうだなぁ。
でも応援したい。
「殿下、大変ですっ」
「何事だ」
部屋の外で兵士さんの声がした。凄く慌てているようだ。
「国王陛下と王妃殿下の寝室から物音がしメイドが確認すると、何かが燃えていたそうです」
「そうか……怪我をした者は?」
「おりません」
「うん、ならよかった。危ないから誰も中に入らないようにしておいてくれ。すぐに行く」
「はっ」
まさか同じような魔導具が、王様と王妃様の寝室にも!?
「あの、僕も行きます」
「あぁ、頼むよ。他に不審な魔導具がないか、鑑定してくれ」
殿下の部屋ももう一度鑑定し、何もないことが分かると部屋を移動。
王様と王妃様の寝室、さらに執務室も調べることになり、なんだかんだと十部屋ぐらい鑑定した。
そして見つかったのは、何かが燃えた焦げ跡と――
「こちらは映ったものを記憶する魔導具です。これ自体に記録されるので、遠隔操作で自爆させることも出来なかったのでしょう」
陛下の執務室ではなく、二人の大臣さんの執務室で見つかった。
この二人は国王陛下と親しい間柄の大臣さんだという。
何者かが王室を監視するために仕掛けた物……。
こんな大それたことをするなんて、いったい誰が――
「おぉ、兄上、心配しましたぞ」
「バルザレック……」
バルザレック?
えっと、確か王様の弟君か。
「兄上や義姉君の部屋で、ボヤ騒ぎがあったと聞き、駆け付けました。お怪我はございませんでしたか?」
「はっはっは。心配せずとも、みな無事だ」
「それはよかった。兄上にもしものことがあったら、大変ですから」
なんだろう、この違和感。
あと……
殿下の顔が引き攣って見える。
仲、悪いのかな?
加えて子爵からの賄賂を受け取ったとし、ガルバンダス侯爵家には金貨一五〇枚の賠償命令が下された。
実際ガルバンダス侯爵が加担しているのだろうけど、それを問えるだけの証拠がない。
悔しくはあるけど、そこはまだ仕方ないか。
「ところでデュカルトよ」
「は、はい、陛下」
「主は鑑定のスキルを持っておったな?」
「はい。そのスキルを使って、魔導具にとって隠された帳簿と目録を見つけることができました」
「そうか。では一つ頼まれてくれぬの?」
陛下から僕に頼み?
「も、もちろんですっ」
僕はそう答えてから、王子殿下に連れられて大きな部屋へと入った。
派手さはないけど、全ての家具が調和された綺麗な部屋だ。きっと高級な家具なんだろう。
奥にはベッドルームもあるし、客室なのかな?
「ここはわたしの寝室なんだ」
「えぇ! で、殿下の寝室ですか!?」
え、僕、寝室に連れて来られてこれからどうなっちゃうの?
え?
ドキドキしていると、殿下が近づいて来て……ち、近い。
イケメンの顔が近い!
僕のん気ですから!
「部屋を鑑定してくれないか?」
「え?」
僕の耳元でぼそりを聞こえた殿下の声。
部屋を鑑定って……つまり魔導具がどこかにあるかもしれないってこと?
「わ、わかりました」
「あぁ、ちなみに任意の物もあるからね」
「任意、ですか?」
任意の意味はすぐに分かった。
窓ガラスには簡単に割れないよう、コーティングの魔導具が設置され、ベッドには防御結界を張る魔導具が。
こうした警備という意味で設置された魔導具ではなく、誰かが何かの目的で置いたかもしれない魔導具が有無を調べてくれってことだろう。
「これも魔導具ですね。殿下?」
「……それは王室で用意したものではないなぁ。鑑定内容は?」
「え? あ、はい。魔導具が拾った音を、対応するもう一つの魔導具から聞くことができ、る……盗聴器だ!」
「なるほど。室内で交わされる会話を盗み聞きするものか。対応する魔導具があるってことだな。ではその魔導具から流れる魔力を辿れば――」
犯人を見つけることができる――ん? なんか焦げくさ……
「わっ!」
「デュカルト!」
突然僕が手にしていた魔導具が爆発した。
まぁ小さなものだったし、ちょっと手を切った程度だけど。
「誰かっ。すぐにミューラ神官をっ」
「殿下、何かあったのですか!?」
「デュカルトが怪我をしたのだ。すぐにミューラを呼べっ」
「承知いたしました」
「大丈夫です殿下。少し血は出ていますが、傷は浅いので。神官様の手を煩わせる程度ではありません」
たぶん。
まぁ痛いものは痛いけれど。
「そうはいかん。君にもしものことがあったら、侯爵に恨まれるのはわたしなのだからね」
「はは、はははぁ」
「迂闊だった。盗聴用であれば、見つけた時点で奴にもバレていただろうに。すぐに手放すよう言わなかったわたしのせいだ」
「そんなことありません殿下っ。そもそも鑑定して対応するもう一つの魔導具があるとわかった時に、持っていた僕が悪いのですから」
「いやわたしが」
「いえ僕です!」
と言い争っている間に、
「どっちが悪いとかどうでもいいので、傷を見せてください」
っと、真っ白な法衣を着た女の人がやって来た。
「ミューラ! 急いで治癒を」
「はいはい。ですから邪魔です、おどきください」
う、うわぁ。王子に向かって邪魔って……凄い、この神官さん。
「痛かったでしょう。すぐに治癒しますから。"この者が受けし傷を、癒したまえ――ヒール"」
わぁ、凄く温かい光だ。
侯爵家にもお抱えの神官さんがいて、その人の光も温かかった。
「父上が言っていました。治癒の光が温かいのは、その人が優しいからだって。業務的に治癒する人の場合、光は温かくないそうです」
「そ、そうですか」
「あなたの光は、凄く温かいです」
「ほぉ、ミューラよかったな。お優しい神官様だってさ。わたしにはちっとも優しくないのになぁ」
「うるさいです殿下。優しくする価値が殿下にはないだけです」
「ほらなぁ、デュカルト。その光が温かく感じたのは、気のせいだぞぉ」
うん。なんとなく僕わかっちゃった。
この二人、本当はすっごく仲良しなんだね。
もしかして恋人?
身分違いの恋って、難しそうだなぁ。
でも応援したい。
「殿下、大変ですっ」
「何事だ」
部屋の外で兵士さんの声がした。凄く慌てているようだ。
「国王陛下と王妃殿下の寝室から物音がしメイドが確認すると、何かが燃えていたそうです」
「そうか……怪我をした者は?」
「おりません」
「うん、ならよかった。危ないから誰も中に入らないようにしておいてくれ。すぐに行く」
「はっ」
まさか同じような魔導具が、王様と王妃様の寝室にも!?
「あの、僕も行きます」
「あぁ、頼むよ。他に不審な魔導具がないか、鑑定してくれ」
殿下の部屋ももう一度鑑定し、何もないことが分かると部屋を移動。
王様と王妃様の寝室、さらに執務室も調べることになり、なんだかんだと十部屋ぐらい鑑定した。
そして見つかったのは、何かが燃えた焦げ跡と――
「こちらは映ったものを記憶する魔導具です。これ自体に記録されるので、遠隔操作で自爆させることも出来なかったのでしょう」
陛下の執務室ではなく、二人の大臣さんの執務室で見つかった。
この二人は国王陛下と親しい間柄の大臣さんだという。
何者かが王室を監視するために仕掛けた物……。
こんな大それたことをするなんて、いったい誰が――
「おぉ、兄上、心配しましたぞ」
「バルザレック……」
バルザレック?
えっと、確か王様の弟君か。
「兄上や義姉君の部屋で、ボヤ騒ぎがあったと聞き、駆け付けました。お怪我はございませんでしたか?」
「はっはっは。心配せずとも、みな無事だ」
「それはよかった。兄上にもしものことがあったら、大変ですから」
なんだろう、この違和感。
あと……
殿下の顔が引き攣って見える。
仲、悪いのかな?