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「あ、おねーさん。今日はちゃんと食べるんですね」
なにかひとつでも酒と煙草以外のものを買わないといけないような気がして、春雨ヌードルをカゴにいれた。だけど彼はそれでは足りないと言って、今日も自分のイチオシ総菜をかき集めてきた。真っ白に清潔なカウンターが、ごちゃごちゃと彩られる。
「ねえ。そんなふうにされたら、私もうこのコンビニに来られないんだけど」
この前は受け取ってしまったけれど、さすがにもう受け取れない。私と彼はまったくの他人で、ただの客と店員でしかない。年下に奢られるということにも抵抗があった。
「気にしないでください。おれが勝手にやってることなんで」
「そういうことじゃないでしょう」
「まあまあ、いいじゃないですか」
「よくない。きみ、私より年下だし、そもそもきみと私は知り合いでもなんでもないでしょう。こんなふうにされるのは、どう考えたっておかしい」
だんだん声が尖っていく私に、彼はぱっちりとまばたきをして
「じゃあ、おたがいに減らしましょう」
とさっぱりとした顔で告げた。
「減らす?」
「おれはこの、夏真っ盛りキーマカレーパンを棚に戻すんで、おねーさんはワインを一本棚に戻してください。それならフェアですよね」
そういうことか。納得しつつ、なにやら主導権が彼に握られていることに気づく。
「あのね、そういうことを言ってるんじゃなくて」