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「おねーさん、死にますよ?」

 赤茶色の彼がそう警告したのは、はじめて会ってから三週間ほど経ったころだった。

 おねーさん。たしかに私は彼より五つは年上だろうから、間違ってはいないけれど。

「毎晩毎晩、おねーさん大量に酒買ってますよね? あと67番」

「76番」

「あ、そうそう76番。て、そうじゃなくて。まじでおねーさん死にますよ? てか、ご飯食べない人なんですか? アルコールと煙草しか摂取しないのはまずいですって」

 いくら私のほかに客がいないとはいえ、彼はよくしゃべった。ほかの店員は眠気マックスなのか、半目であくびしながら商品を陳列している。

「とにかく、まじで気をつけた方がいいですよ。ある日バタンッてキますよ」

「……三週間経ってなにひとつ慣れてない人に言われても」

 ぼそっと言い返すと、彼は大きく目を見開いてからくっきりと笑った。ちらりと覗く歯は、まるで乳歯みたいに白く小さい。

「おぼえてたんだ! うん、そう、今日でバイトはじめて三週間で」

「べつに、おぼえてたわけじゃなくて」

「おねーさんいつもぼーっとしてるから、おれのこと見えてないかと思ってた!」

「いや、だから……見てたわけじゃなくて」

 いくら私が否定を重ねても、彼はうれしそうに笑うだけで、ちっとも届いていないようだった。眠気マックスの峠を越えて、ハイになってるのかもしれない。

「そうだ。おねーさん、ちょっと待ってて」

 私が返事をする間もなく、花火みたいに鮮やかなスニーカーはレジからぽーんと飛び出した。いったい何事だろう。

 ぽかんと突っ立っていると、彼は陳列棚から慌ただしく惣菜やスナック菓子をピックアップしてレジに戻ってきた。