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それから毎晩のように三埜くんはうちへ来た。
ろくに会話もしないまま、吸い込まれるようにベッドに向かってそのまま朝を迎えるので、キムチ鍋を振る舞ってもらったのは何日か経ってからのことだった。
きょーこさん不健康だから、と作り置きのおかずまで用意する姿には目を見張った。彼のつくる料理はどれもおいしく、どれも茶色かった。
「あの子、飛田林くんの彼女?」
食後にゼリーを食べながら訊くと、スプーンをくわえた三埜くんは首をかしげた。
「今日お店に来てた、ロングヘアーの女の子。今夜はうち来る? って飛田林くんに訊いてたから、彼女なのかと思って」
「ううん。ふたりは友だち。でもおれはつき合うだろうなって思ってる。トントン、あの子と仲よくなってからなんか感じがかわったし」
「三埜くんはあの子がすきなの?」
「へっ?!」
彼は大きな声で言って、ぽかんと口をあけた。
「前に飛田林くんに嫉妬してるみたいな言い方してたから、そういう意味かと思って」
「ないないっ! そういうのはないっ!」